横浜の大物ルーキーがプロ顔負けの公式戦初本塁打を放った。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)神奈川大会3回戦で、横浜・万波中正外野手(1年)が、横浜スタジアムの電光掲示板下を直撃するアーチを放った。コンゴ出身の父を持つ大型野手が、昨年ビジョンを破壊したソフトバンク柳田に迫る衝撃の推定135メートル弾を披露。日米5球団のスカウトも目を丸くした。2年後に迎える第100回大会の主役がベールを脱ぎ、松陽に5回コールドで大勝した。

 初めての横浜スタジアムで、初スイングが本塁打になった。2回。先頭の万波が鋭いスイングで低め直球をとらえた。「少しタイミングが遅れましたが、真芯でとらえたのであそこまで行きました。うれしかった。完璧でした」。190センチ、92キロの大砲が放った打球は、ほぼグラウンドと平行にバックスクリーンへ一直線。電光掲示板下「コカ・コーラ」の看板が、ボスっと奇妙な音を立てた。

 昨年、同スタジアムの電光掲示板を破壊したソフトバンク柳田には及ばないが、推定135メートル弾は高校1年生が飛ばす打球ではない。コンゴ出身の父と日本人の母を持つ怪物は言った。「まだ飛ばせると思います。柳田さんのところまで飛ばせるように頑張ります」。中学3年で計測したスイングスピードは推定154キロ。プロのクリーンアップでも150キロなら上々と言われる。「スーパー中学生」として鳴り物入りで入学したパワーを見せつけた。

 ブルージェイズのダン・エヴァンス環太平洋担当スカウトディレクターは「本当に16歳なの?」とまじまじ見つめた。強靱(きょうじん)な下半身は趣味にも起因する。万波は「自転車が好きで、昔は結構遠くまで行きました」と思い出を語った。ある時は練馬から日光まで挑戦。約150キロを走行した。夏2勝目を飾った平田徹監督(33)は万波の体の柔らかさにも言及し「関節が柔らかくてしなりがすごい。まともに当たれば90度どこでも入る。ケタが違います」と言った。

 春先は結果が出ずふさぎ込むこともあったが、確実に同校3年ぶりの甲子園出場に欠かせない戦力となった。最上級生として臨む2年後の第100回大会も意識する。「100回大会でみんなと甲子園に行きたいです。甲子園に出られるだけ、出たいです」。目標とするプロ入りの前に、まずは高校野球界のスターになれ。【和田美保】