ついに宿敵を撃破した。東北が仙台育英に4-3で勝利し、決勝進出を決めた。夏は12年以来、4年ぶりの対戦。試合は延長戦となり、11回1死三塁から布施東壱捕手(2年)の二塁内野安打の間に三塁走者・松本大雅外野手(3年)が生還してサヨナラ勝ちした。練習中から「打倒仙台育英」を掲げ、1死三塁からゴロで点をもぎ取る練習を重ねた執念が実った。決勝は28日午後1時からコボスタ宮城で行われる。

 汗と涙は、この時のために流してきた。11回裏1死三塁。代走起用の東北・松本は三塁上で落ち着いていた。「ずっと練習してきたこと。布施がゴロを打ってくれると信じていました」。サインは「ゴロゴー」。打球が転がった瞬間に本塁に突っ込む。4球目。打者布施が一、二塁間へ打球をたたき付けた。スタート。二塁手からの送球は捕手の手前でワンバウンドする。「イチかバチか、真ん中に突っ込んだ」。セーフ。もぎ取ったサヨナラ勝ちに歓喜が爆発した。

 執念があった。三塁コーチの児玉修哉主将(3年)は「1年の大会から15-0で5回コールド負け。このままでは勝てないと必死に練習して、挑んだ秋の大会。8-1でコールド負け。悔しかった」。ナインの心に刻まれた力の差と悔しさ。練習が変わった。ケース打撃で走者がつけば、「西巻」「瀬戸」と仙台育英の主力の名前を呼び、右の強打者が打席に立てば「福山」と呼ぶ。練習メニューを貼るボードには「打倒仙台育英」と書き込んだ。

 泥にまみれた。打てなくても1点をもぎ取る。シートノックでは試合終盤で1死三塁を作ることを想定。「ゴロゴー」の作戦を徹底的に繰り返した。今大会中もベンチ入りメンバーは午前中で練習終了だったが、午後に自主練習でひたすらに本塁へ走り、精度を高めた。我妻敏監督(34)は「3年生はできるつもりじゃなくて、できるまでやっていた。その強みがあった」と必死な姿に目を細めた。

 研究した。送球のクセを分析。ミスが起こる可能性を読んだ。サヨナラ勝ちの場面。打球を捕った仙台育英・瀬戸二塁手が指を負傷したことを知っていた。児玉は「送球が雑なところもある。指のケガもあるから行けた」と突っ込ませた。上回ったのはワンプレーで勝つという気迫だった。「甲子園が決まったわけではない。次も勝たないと」(児玉)。夏では優勝した09年以来、7年ぶりに宿敵を破り、つかんだ大一番。負けるわけにはいかない。【島根純】