甲子園が報徳学園(東兵庫)の「小園」を知るには、1打席で十分だった。試合開始のサイレンが鳴った直後の第1打席。聖光学院・衛藤が投じた外角低め146キロの直球を小園は振り抜いた。痛烈な打球は左前へ。シングルヒットかと思いきや、快足を飛ばし、二塁に到達。プロでも8秒を切ると速いといわれる中で、タイムは7秒59をマーク。4万2000人の大観衆をいきなり興奮させた。

 小園 行けると思った。全打席で次の塁を狙っているので、そういうところから隙をついて思い切っていきました。跳ねたのもあって処理も遅かったので。

 さらに同点の3回、先頭で今度は外角へのカーブを引っ張り、右中間フェンス直撃の二塁打。続く村田の犠打で三塁に進んだ。3番長尾の打球は右翼への浅めのライナーだったが、自信を持って三塁を蹴り、猛スピードで2点目のホームへ。「足には自信があるので、しっかりした判断できたと思います」。第4打席でも左中間に抜ける二塁打を放ち、大会タイ記録に並んだ。長尾の左前打で決勝のホームを踏んだ。

 重ねた努力が高校最後の夏に表れる。昨夏の第99回大会後に2年生で選抜されたU18のW杯に参加。早実(西東京)清宮幸太郎(日本ハム)、広陵(広島)中村奨成(広島)らに刺激されたのか、野球への取り組みが変わったと母こず江さん(42)が明かした。「教わったトレーニングを欠かさずにやっていますね。体つきもだいぶ変わってきました」。大会中にトレーナーから教わったチューブを使ったトレーニングを家や学校で毎日継続。食事にも気を配り、体重も昨冬から7キロ増量した。小園は「すごく打球の球足も速くなったと自分でも感じている」と成長を実感した。

 「目標は全国制覇なので、厳しい戦いになると思いますけど、1戦1戦しっかり戦っていきたいと思います」。パワーアップを遂げ、100回の夏の主役になる。【古財稜明】

 ◆小園海斗(こぞの・かいと)2000年(平12)6月7日、兵庫県生まれ。小学1年から宝塚リトルで野球を始め、光ガ丘中では枚方ボーイズに所属。報徳学園では1年春から正遊撃手。2年春に甲子園出場して4強。昨年はU18代表としてW杯に出場し、今年も第1次候補に選ばれている。遠投105メートル。50メートル走5秒9。178センチ、79キロ。右投げ左打ち。好きな言葉は「日本一のショート」。帽子のつばにも記している。

 ◆1試合個人最多二塁打3 報徳学園・小園が記録。15年に杉崎成輝(東海大相模)が準決勝の関東第一戦で記録して以来で28人目。