名寄地区は25日、代表決定戦が行われ、枝幸が大逆転で豊富を7-6で下し北北海道大会出場を決めた。

5点ビハインドの9回に、土壇場から打者9人の猛攻で一挙6点を挙げた。最後の打席まで4打数無安打3三振だった4番山根佑斗一塁手(2年)が、人生初のサヨナラ打で勝負を決めた。士別翔雲は稚内大谷を9-5で下し、地区を突破した。

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気力を使い切った。173センチ、100キロの枝幸・山根が大きな体を地面に突っ伏した。9回に5点差をひっくり返す大逆転劇。サヨナラで試合を決めた4番は「打った瞬間泣いちゃった。勝った、っていう涙です」。最後まで勝利を信じて応援してくれたスタンドへのあいさつを終えると、全身の力が抜けた。それほど最後の1打席に集中した。

「打席が回ってくると思っていた」。ここまで4打席凡退。自身の打席で終わった8回は二、三塁の好機で三振して点差を詰められなかった。それでも信じていた5打席目は本当にやってきた。5点を追う9回、5番平岡隼左翼手(2年)から始まり6本の単打を積み重ね追いついた。そして山根に回った。二塁に走者を置き、一打サヨナラの場面で。「ヒットを打つことしか考えていなかった。アウトコースだったような気がします」。無我夢中で振ったバットに当たった打球は、中堅の頭を越えた。

部員14人のうち3年生は2人だけ。1年時には連合で出場するなど苦労を知る横山航大主将(3年)は「みんな生意気だけど、そういうところで信頼関係が生まれる」。10人の現2年生のおかげで昨年は春夏秋いずれも単独出場ができた。そして今夏-。3年ぶりに夏の白星を挙げた浜頓別との1回戦に続き、今度は道大会切符獲得。どんなに不振でも「佑斗しか4番はいない」と後輩を信じ、横山は自ら勝利を決めるホームを踏んだ。あふれてきた涙は歓喜する後輩の胸でふいた。

初めて北大会に出場した17年夏。大会直前の部員のケガを乗り越え、9人で戦う姿に枝幸が沸いた。3年ぶりの旭川スタルヒンへ。山根が「みんなで一丸となって全員で打つ」といえば、横山も「やることは一緒。笑って終わりたい」。オホーツク海に面する人口8000人の町から、再び旋風を起こす。【浅水友輝】