<高校野球北北海道大会:旭川実2-0旭川明成>◇1日◇旭川地区Dブロック2回戦◇旭川スタルヒン

旭川実(北北海道)のプロ注目右腕、田中楓基投手(3年)が快投&V打で、最後の夏に最高のスタートを切った。旭川地区予選初戦(2回戦)の旭川明成戦に先発。1回にいきなり自己最速タイの148キロをマークした。立ち上がりから飛ばし、9回を4安打に抑え、毎回の12奪三振で完封。「直球に頼らずスライダーもバランス良く投げることができた。まずは初戦を勝ててよかった」と落ち着いた表情で振り返った。

攻撃でも貴重な一打を決めた。0-0の7回2死三塁。河原康太郎主将(3年)のバットを借り、「頼む、打たせてくれ」と念じ打席に入った。初球を一塁ファウルグラウンドに打ち上げたが、相手が落球。仕切り直しの2球目も振りにいき、打球は遊撃横に転がった。再び「やっちまった」が、全力疾走。打ち取られた当たりだったが、50メートル走6秒2の俊足で決勝の内野安打をもぎ取った。

悔しい思いを力に変える。昨秋北海道大会決勝は最速148キロ左腕の北海・木村と投げ合い、0-0の8回に許した本塁打の1点で敗戦。センバツ切符を逃し、今春は旭川地区予選で敗れて北海道大会に出場できなかった。「速い球だけでは勝てない」と最後の夏に向け、カーブを研磨。この日は148キロの直球に99キロのカーブで約50キロの緩急をつけ、封じ込んだ。

「夏こそ甲子園に出たい」。NPB8球団11人のスカウトが視察する前で、ポテンシャルの高さをアピールした右腕。進化した背番号1が、11年ぶりの聖地を引き寄せる。【永野高輔】