天国の母へ、支えてくれた父へ、感謝を伝える夏にする。藤沢西(神奈川)は7回コールドで初戦を突破。1番の山口太凱外野手(3年)は2本の長打、3打点で勝利に貢献。「母にいい報告が出来る」と白い歯を見せた。

貴重な先制点だった。0-0の4回2死満塁、直球を振り抜いた。右翼線へ走者一掃の3点適時三塁打。塁上では父裕之さん(52)が見守る三塁側の応援席へ、笑顔で手を上げた。

昨年7月20日、闘病中だった母尚子さんが亡くなった。「悲しい気持ちがあったんですが『そろそろ』と言われていた。でも、『そろそろ』と言われてからすごく頑張ってくれた。気持ちの整理はつきました」。闘病中、母は言ってくれていた。「野球に専念しなさい」と。最後の夏までプレーしきる。それが自分の表現できる感謝の形だった。

それからの1年を裕之さんは「本当に夢中でした」と振り返った。夜は遅くまで洗濯などの家事を、朝は早くから毎日の弁当作りを必死にやり抜いた。全ては、息子が野球に専念できる環境作りのためだった。

父の支えに山口は「弁当は母に比べれば劣るんですけど」と笑顔をみせ、「けど、毎日感謝しています」と真剣な表情で話した。試合後2人は「通過点だもんね」と言葉を交わした。勝ち進めば20日の5回戦、母の命日に東海大相模と対戦する可能性がある。3歳上の兄が日大藤沢3年夏の決勝で敗れた相手。その日まで、絶対に負けない。【阿部泰斉】