<高校野球奈良大会:奈良情報商・奈良商10-4奈良朱雀・商工>◇16日◇2回戦◇佐藤薬品スタジアム

高校野球には勝者にも敗者にもドラマがある。日刊スポーツでは今夏、随時連載「BIG LOSER」で敗れし者の隠れたストーリーにスポットをあてる。

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奈良朱雀・商工の清水風雅投手(3年)は4人の仲間が次々と登板するのを中堅から見ていた。春にはプロの視察も受けた背番号1の左腕は、登板なく最後の夏を終えた。「この背番号でマウンドに立ちたかった。体はどこも悪くない」。実力不足を痛感した。

奈良市立興東館小では投手。だが興東館柳生中には野球部がなかった。硬式のクラブは「硬球が怖くて」敬遠。卓球、剣道との比較でバドミントン部を選択。ダブルスで県2位、シングルスで県3位と活躍した。

だが野球の血がどうしようもなく騒いだ。毎日のように自宅庭のネットに向かって硬球を投げ込んだ。3年間のブランクは野球愛を育む時間でもあった。「スマッシュの動きは野球と同じ。役に立ったと思います」。高校は両親の母校を選んだ。幼少期からの夢だったプロ野球選手への道が再びつながった。

最速はまだ134キロだが身長183センチの左腕の伸びしろは無限。「まだまだ未熟なので大学でステップアップしてプロを目指したい。オリックス山本さんのように直球で三振を取れる投手になりたい」。目に涙をためながら笑顔を見せた。【柏原誠】