甲子園に、あの笑顔が戻ってきた。今春大阪桐蔭を卒業し、4月1日にENEOSに入社する中野大虎投手(18=前主将)が聖地で母校の日本一を見届けた。当初は雨予報。右腕が帰阪した朝には一転、雲の隙間から日の光が見えていた。

今年1月に卒業。その後もなお、西谷浩一監督(56)との間に強い信頼関係があった。

昨夏、大阪大会決勝で延長10回タイブレークの末に敗戦。汗と涙が入り交じる中、後輩へのラストミーティングで「大阪桐蔭は日本一にならなきゃいけない高校」と伝えた。

昨秋、同校野球部OBでは珍しい行動に出た。中野は2年春夏に甲子園で受けた応援の力を忘れないよう、同校の吹奏楽部の演奏会に4度も足を運び、同級生が奏でるパワーを再認識。自身の趣味は音楽鑑賞。行動力や周囲への気配りなど、抜群のキャプテンシーをもつ中野らしい行動だった。

今年3月には西谷監督に長文のメールでつづった。

 

「後輩はプレッシャーの中で野球をやるのが当たり前という覚悟を持ち、入学しました。メンバー、メンバー外、スタンド含めて全員で戦ってください! 僕も全力で魂を送り、共に戦います。みんなのバックには大応援団がいます。必ず春の頂点『日本一』を取ってください。『魂』『愉しむ』」(一部抜粋)

 

センバツでは準決勝までに西谷監督はインタビューで、何度も前主将への感謝を述べていた。決して簡単に本心を語ることのない指揮官が、どれほど心の支えにしていたかが、わかった。「ここまで来られたのも(卒業した)3年生の力。中野が頑張ったチームを勝たせられず、すごく反省しました。今の子たちは、その悔しさを持っています」。

3月31日、後輩が優勝旗を手にし、恩師が宙に舞った。中野は「ほんまに西谷先生は僕たちに勝負をかけてくれましたし、今につながっています」と祝福した。同校野球部は例年秋に社会人野球・日本選手権(京セラドーム大阪)の観戦が恒例。今度は中野が恩師の前でダイヤモンド旗を手にする姿を見せる。【中島麗】