<高校野球岩手大会:福岡3-2一関修紅>◇7日◇1回戦◇岩手県営野球場

 東北の球児の夏は、古豪の初戦突破で幕を開けた。岩手県内で甲子園最多10度出場の福岡が、一関修紅を下した。「11」度目の聖地を目指す今年は学校創立「111」年目。OBらの手厚いサポートを受けた選手たちは、開会式直後の第「1」試合を「1」点差で制し、幸先の良いスタートを切った。

 土壇場9回の守備、左胸に刻まれた「H」の魂を脈々と受け継ぐ2人が、福岡に勝利をもたらした。2点差で2死二、三塁のピンチ。打球は左翼線に転がり、誰もが同点を覚悟した。だが、小野寺陽左翼手(3年)は諦めていなかった。「今年、ここで負けるわけにはいかない」。ワンバウンド返球をミットに収めた神(じん)駿太郎捕手(3年)が、二塁走者を間一髪で仕留めて逃げ切った。80年夏、元横浜(現DeNA)の欠端光則氏(49)と共に甲子園の土を踏んだ父を持つ2人の「ホットライン」だった。

 夏に10度で春はなし。それでも県内最多の甲子園出場を誇る伝統校。11度目の聖地を狙う今年は学校創立111周年と、縁起の良い数字が並ぶ。記念すべき年の初戦は、1点差勝利。抽選会で開幕カードを引いた中村大輝主将(3年)も「あまりに1ばかりで、学校でも話題になった(笑い)。勝てて良かった」と運も味方に?

 つけた。

 節目の年にOBも強力にバックアップした。神は「これまで以上にたくさんの先輩方がグラウンドに来て、指導してくれた」と感謝する。時に厳しい言葉も飛んだが、それも期待と愛情の裏返し。冬に神社の階段を駆け上がる恒例のメニューも、OBが除雪作業をしてくれたからできた。6月の合宿には、地元二戸市にある阿部繁孝商店の鶏肉を差し入れされ、夏に向けて英気を養った。

 85年夏から遠ざかる甲子園。OBで、昨年10月に就任した志賀善武監督(65)は孫ほどの後輩たちに言う。「勝って、新しい伝統を作っていこう」。選手にも、その名を汚したくない意地がある。救援で7回2/3を1失点で抑え、7回に決勝犠飛を放った福田聖矢投手(3年)は「(出場回数を)1つでも伸ばして、福高がずっとトップでありたい」と思いを口にする。県NO・1まであと6勝。先輩たちが築き上げてきたその座を、簡単に譲ることはできない。【今井恵太】

 ◆岩手県立福岡高校

 1901年(明34)創立。旧制福岡中を前身とし、県内で3番目に古い歴史を持つ。普通科の男女共学校で定時制も併設。98年に髪形に関する校則が変更されるまでは、男子生徒全員が丸刈りと定められていた。

 野球部は夏の甲子園に27年の初出場から10度出場。初出場時に優勝した高松商と対戦し、日本で初めて敬遠満塁策を行ったことでも知られる。ユニホームの「H」は地元出身の地球物理学者・田中舘愛橘が考案した日本式ローマ字表記に由来する。所在地は二戸市福岡字上平10。