<高校野球神奈川大会:神奈川工9-2関東学院六浦>◇11日◇1回戦◇横浜スタジアム

 あいつが打ったらおれも打つ!

 双子の兄弟の相乗効果で、神奈川工が初戦コールド発進した。1点を追う3回、弟の黒田拓夢(たくむ)内野手(3年)が同点打を放つと、直後に兄の大夢(ひろむ)外野手(3年)の適時打で勝ち越し。一挙6点のビッグイニングで突き放し、関東学院六浦に快勝した。

 弟の好打が、兄の闘争心に火を付けた。「拓夢が打ったので。打つしかないと思いました」。同点とした直後の3回2死一、二塁。黒田大夢は狙い通り中前へ打球を運んだ。本塁に頭からつっこんだ弟を見届け、一塁上でガッツポーズ。下位でも打線の勢いは止まらず、この回6点でコールド勝ちを決定付けた。

 3番三塁の弟が同点打、5番左翼の兄が勝ち越し打。顔がそっくりな黒田ツインズは、息もぴったりだ。小、中、高とずっと同じチームでプレーし、守備は身ぶり1つで意思疎通できる。通学だって毎朝一緒。あまりに似すぎて「トイレのタイミングまで同じ。自分が入ろうとするといつも入ってる」(大夢)という驚異のシンクロ率を誇る。

 でもそんな2人も、レギュラーになるタイミングは違った。弟拓夢は昨夏からスタメン出場。「片方が出てると、うれしい半面焦ったりしますよね」。兄の気持ちもよく分かっていた。打撃フォームで改善点があれば、遠慮せず指摘し合った。高め合い、兄大夢が背番号1ケタを勝ち取ったのは今春。念願だった、2人でレギュラー出場する夏を迎えた。

 3年前、兄弟はこう言って進学先を決めた。「公立で一番甲子園行けそうなのって、ここだよな」。野球は高校限りでやめてしまう。大夢と拓夢。右打ちと左打ちとか、弟が食べられないチョコレートも兄は平気とか、何でもかんでも同じワケじゃない。ただ、追いかける「夢」は1つだ。激戦区神奈川の王者にだけ許される大舞台に、黒田ツインズが最後の夏をかける。【鎌田良美】