<高校野球神奈川大会:日大藤沢3-2武相>◇12日◇1回戦◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

 えっ、インフィールドフライなのにサヨナラ勝ち?

 武相-日大藤沢戦は、珍しい形で決着した。2-2で迎えた9回裏、日大藤沢は1死満塁と絶好のサヨナラ機。1番・伊藤修太外野手(3年)は遊撃へのインフィールドフライに倒れたが、武相ナインがひと呼吸置いたスキに、三塁走者の斎藤歩内野手(1年)がスルスルと走りだし、サヨナラのホームを踏んだ。ともに甲子園出場経験のある強豪同士の好カードは、意外な幕切れとなった。

 その瞬間、驚きの声が球場を支配した。土壇場で同点に追いつかれた日大藤沢は9回、1死二、三塁とサヨナラの好機を迎えた。敬遠四球で満塁。続く主将・伊藤修は遊撃へのインフィールドフライに倒れ、2死に。武相の満塁策が成功したかに見えた。

 打球を処理した山本将好内野手(3年)が板野拓耶投手(3年)にボールを返球する。さらにひと呼吸おこうと、武相の野手がマウンドへと集まり始めた。そのときだった。タイムがかかっていない。三塁走者の斎藤は、わずかな隙を見逃さなかった。相手が無警戒なのを確認すると、一目散に本塁へ向かい、スライディングでホームイン。何が起こったのか、武相ナインはしばらく理解できなかった。

 記録はホームスチール。斎藤は「ボールを持った板野さんが、マウンドに帰って後ろを向いていた。ホームベース前にいた捕手も手にキャッチャーマスクを持っていたから、これなら行けると思った」と振り返った。武相が猛抗議をしたため「不安だった」と成り行きをみつめ、審判が正式に試合成立をアナウンスすると、喜びを爆発させた。

 伊藤修主将は「日頃から次の塁を狙うという意識でやっています」と言う。斎藤はこの試合が公式戦初出場。全員のテーマである集中力ある走塁を、大事な場面で1年生がやってのけたところに、チームの強さが凝縮されている。中日山本昌の実弟、山本秀明監督(42)は「ルールの勉強は、チームでもしている」と話した。ただ、相手監督が社会人・三菱自動車川崎(現三菱ふそう川崎)時代の同僚だったこともあり、「勝って何だけど…。うちが逆のことをやられたら逆上している」と、思わぬ幕切れに複雑な表情だった。【柏山自夢】

 ◆インフィールドフライ

 野球規則2・40に明記され、安易な併殺を防ぐ目的がある。無死または1死で、走者が一、二塁、もしくは満塁での打者のフェアの飛球(ライナーとバント飛球除く)で、内野手が普通の守備行為をすれば捕球できるものをいう。審判がこれを判断し宣告。打球がファウルになった場合を除き打者はアウトとなるが、インプレーのため走者は離塁しても進塁しても良い。飛球が捕球された場合は通常の飛球同様リタッチが必要。捕球されなかった場合は、走者にリタッチの必要はない。また進塁義務も生じないため、この走者をアウトにするにはタッチプレーが必要となる。