<高校野球春季神奈川大会:桐光学園11-1日大藤沢>◇3日◇準決勝◇保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム

 「神奈川のドクターK」こと桐光学園・松井裕樹投手(3年)が“原点回帰”で18日から栃木で行われる関東大会出場を決めた。日大藤沢に5回コールド勝ち。3安打1失点だったが、5イニングで12三振を奪った。チェンジアップ主体だった前回の横浜隼人戦から、「宝刀」スライダーで三振を量産。打っては3打数3安打4打点と勝利に貢献した。保土ケ谷球場には約1万5000人が来場し、春では初となる超満員札止めの大フィーバーとなった。

 松井のワンバウンドのスライダーにバットを止めることができない。ボールがベルト上の高さから足元へと消えた。この日最後となる12個目の三振を喫した日大藤沢・阿部はあまりの落差に、スイングした後に左膝が地面につきそうなほどだった。5回12奪三振。全てが空振りという圧巻の投球だった。

 前回の横浜隼人戦では「10球も投げていない」というスライダーがキレた。2回終了後、女房役の鈴木航平捕手(3年)に「今日はスライダーの日や!」と声をかけられるほどだった。「伝家の宝刀」で奪った三振は6つ。全71球のうち約3割を占め、4回以降投じた20球のうち18球がスライダーだった。

 1回、直球にいつものキレがなかった。直球を狙っていた日大藤沢打線に長短打を浴び失点。「体重移動がうまくいかなかった」と直球主体の組み立てから変更した。頼れるのは昨夏甲子園で1試合22奪三振の記録をマークし、「消える」と評されたスライダーだった。「今日のスライダーなら打たれないと思いました。一番いい球でしたし。カウントも取れて決め球にも使えました」と三振を量産した。

 春はここまで直球主体、スライダー解禁、変化球主体と毎試合テーマを持ってきた。関東大会の切符がかかる大一番でついに「伝家の宝刀」を抜いた。スライダーを進化させるため冬は走り込みを重視。下半身の強化でポール間走は、10秒以上タイムを縮めた。1年時の冬は1分を切れなかったが、今年は49秒を記録するほどたくましくなった。野呂雅之監督(51)は「打者の手元でのキレが上がっている。昨夏と比べてベースの上で変化している」と目を細める。

 確実に成長を遂げる左腕は決勝進出を決めた。関東大会の出場権を得たことで先発は未定だが「まず明日勝ちます。その先に夏の全国制覇があると思うので」と目の前の勝利だけを見つめた。【島根純】