現在、中断している北米スポーツイベントの開催を心待ちにしている日本のファンの皆さんへ、日刊スポーツ在米カメラマンのカンビンこと菅敏(すが・さとし)が贈る「カンビンの早く見たい!撮りたい!伝えたい!」。

これまでに撮影した写真の中から、よりすぐりの1枚をチョイス。思い出や撮影秘話をお伝えします。

初回はエンゼルス大谷翔平選手の写真から。

2018年9月2日、ヒューストンでのアストロズ戦で、右肘の故障から約3カ月ぶりに復帰登板を果たした大谷。初回、ゆっくりと1歩1歩踏みしめながら、マウンドに向かう姿はしびれるものがありました。短いようで長いメジャーのマウンドまでの距離。辛い手術やリハビリに加え、期待ゆえの周りからのプレッシャーもあったでしょ。本人が誰よりも一番この日を待ち望んだはずです。

「1歩1歩踏みしめるようにして向かっていく、そんな後ろ姿を撮りたい、撮らなくてはいけない」それがこの日のミッションでした。

まずは準備、ロケハンです。前日、スタンドの最上階から別の投手がマウンドへ向かう姿で撮影の予行演習。球場はヒューストン・ミニッツメイドパーク。エンゼルスは三塁側ベンチです。横に長いベンチからフィールドへの出口は3箇所あり、テスト撮影時の投手は真ん中の出口からマウンドに向かいました。(そうかー、この投手はベンチで数分間、気持ちを落ち着かせてからマウンドに向かうのか。)マウンドへ一直線に向かうであろう大谷を撮るために、微調整をしながら撮影ポジション取りをして翌日の本番に臨みました。

当日初回の相手の守りが終わり、いよいよ大谷がマウンドに向かいます。予想していた真ん中から出てくるかと思いきや、うわっ、内側からの登場。一瞬、脂汗がにじみました。焦りながらも、とっさに調整して撮り続け、なんとか雰囲気のある1枚が撮れました。想像より少々、右よりになりましたが、背番号17を撮りながら、ジーンとくるものがありました。

技術や準備ももちろんですが、最後はやっぱり、誰よりも自分自身が感動する写真を撮ることが大事だなぁ、といつも思います。

結局その翌月、大谷はトミー・ジョン手術を受けることになりました。打者としては19年5月に復帰し、今頃は再び投打の二刀流が見られるはずでした。

あぁ、1日も早く二刀流大谷翔平を見たい!撮りたい!伝えたい!