ヤンキースは口ヒゲ以外のヒゲを禁止するなど身だしなみの規制が厳しいことで知られているが、このキャンプに「ロン毛」問題が大きな注目を集めた。球団の有望株で今季メジャーのキャンプに参加しているクリント・フレイザー外野手(22)のロングヘアが首脳陣から「風紀を乱す」と指摘され、短髪にするよう命ぜられたのだ。

 確かにこのキャンプで、フレイザーの髪は目立っていた。赤毛を長く伸ばし、天然パーマでボリュームもあるため、そのヘアスタイルに思わず目がいってしまう。しかしヤンキースには髪形に関する規定はなく、フレイザーのロン毛はルール違反ではないそうだ。髪は目立っているもののフレイザー自身は目立ったり自己主張が強かったりする性格という印象は受けない。それでも首脳陣がフレイザーに髪を切らせたことが、米メディアでは物議を醸し「ヤンキースはあまりにも古くさい」と批判的な記事も目立った。

 メジャーでは、顔中のヒゲを伸ばす選手やロングヘアにしている個性派選手が増えた。ロン毛の選手といえばメッツのエース格であるノア・シンダーガードやジェーコブ・デグロム、ジャイアンツのエース右腕マディソン・バムガーナー、レイズのコルビー・ラズマス外野手らがいる。いかついヒゲを蓄えているのはアストロズのエース右腕ダラス・カイケル、ドジャースの守護神ケンリー・ジャンセン、レッドソックスの守護神クレイグ・キンブレルら、投手が圧倒的に多い。ヒゲは相手打者に対して威圧感を出すために伸ばしているという理由をよく耳にするが、特に童顔や柔和な顔立ちの投手が伸ばしていることが多い印象だ。ロン毛に関しては、イケているというより米国ではむしろ田舎スタイルの象徴となっている。

 マーリンズに取材に行った際、フレイザーのロン毛騒動が話題になっていた。マーリンズは昨季ヒゲ禁止のルールを導入したが、選手からは不満が噴出し、FAの選手にも「ヒゲ禁止なら契約しない」といわれ、今季はこのルールを撤廃した。選手たちの不満を直に聞いてきたマッティングリー監督がルール撤廃を球団オーナーにかけ合ったそうで「ヒゲは問題じゃない。プレーで結果を出すことこと大事」と主張している。同監督にとってはヤンキースは現役時代の古巣だが、その現役時代には髪が長すぎると首脳陣に非難され、試合に出してもらえなかったことがあったという。フレイザーの騒動について感想を求められると笑っていたが、内心はフレイザーを擁護したいのではないだろうか。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)