ヤンキースが2年ぶりにポストシーズン進出を決め、これがチームにとって新たな黄金期の幕開けになるのではないかと周囲の期待が高まっている。まだ発展途上にある若手が多く、彼らが期待通りならば、チームはこの先何年も高いレベルの戦いを続けていけるだろう、しかも徐々にレベルアップしていく可能性もあるということで、今後は毎年のようにポストシーズン進出が期待できそうな状況になった。

 ヤンキースといえば数年前まではベテランが多く、イチローが所属していた12、13年などは両リーグで平均年齢が最も高いチームだった。しかし今季は開幕時の平均年齢両リーグ30球団中13番目に若い28・4歳。ロースター枠が広がったこの9月の出場登録選手34人の平均年齢は、26・76歳と若手が完全にチームの多数派になっている。新人ながらすでにチームの顔となっているアーロン・ジャッジ外野手(25)は1987年にマーク・マグワイア(アスレチックス)が樹立したメジャーの新人最多本塁打記録49本を抜いて記録を更新し続け、今季すでに3年目ながらまだ24歳のゲーリー・サンチェス捕手は、ヤンキースの捕手としては史上最多の本塁打記録をマークした。

 マイナーで苦楽を共にしている彼ら若手選手たちは結束力が強く、メジャーでプレーすることを楽しんでいる。

 9月上旬にハリケーンの影響のため、ニューヨークのライバル球団メッツの本拠地シティフィールドで、ヤンキースがレイズ戦を行ったときのことだ。試合を観戦に来ていたメッツファンのある男性が、ヤンキースの選手が活躍すると「サムズダウン(ブーイングのポーズ)」をしたことが注目され、話題になったことがあった。その後ヤンキースでは仲間が活躍するたびにベンチでサムズダウンのポーズをして遊ぶのが流行った。若手たちはサムズダウンのイラストが入ったTシャツも作り、クラブハウスではそれを着ている。若さならではのノリである。

 トロントでポストシーズン進出を決めた日のシャンパンファイトでは、若手選手が喜びを爆発させていた。ほぼベテランで占められていたかつてのチームは、ポストシーズンや地区優勝を決めたときも落ち着いた雰囲気が漂っていたが、それとはやはり違う。シャンパンファイトが一段落したとき、若手中心に選手たちが固まって記念撮影をしたのだが、そんな「みんな一緒」という雰囲気もベテラン中心時代にはあまりなかったのではないか。記念撮影で選手たちが取っていたポーズも、やはり笑顔の「サムズダウン」だった。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)