今季が始まる前、メジャーで二刀流をやっていく上でどんなハードルがあるのか具体的に分からない部分が多かったが、エンゼルス大谷翔平投手(24)を追っていると見えてきたものがいくつかある。特に故障者リスト(DL)は二刀流選手にとって、なかなかややこしいものであることが分かった。

 大谷が右肘内側側副靱帯(じんたい)を損傷したとき、6月8日のDL入りから約1カ月後の7月3日に、まず打者として復帰した。1カ月もブランクがある場合は復帰前にマイナーの試合に出場して調整をするのが普通だが、大谷は試合形式の練習で打席をこなしマイナーの公式戦には出場しなかった。

 DL入り期間中にマイナーで試合に出場することは「リハブ・アサインメット」と呼ばれる手続きが必要で、それも投手と野手では規定が異なっている。野手の場合は最大20日間でマイナーの試合に出場していい規定、投手の場合は最大30日間だが中4日で登板するのが普通であるため、30日間で登板できるのは多くて6試合ということになる。大谷の場合、肘靱帯という明らかに投球による故障でDL入りしていたため、打者として復帰するためにマイナーの試合に出場するのは手続き的にややこしいのかもしれない。

 しかし肩肘ではなく、投手でも野手でもなり得る故障の場合は、また違ってくるようだ。昨年ドラフト1巡目(全体4位)でレイズに入団し現在2Aでプレーする二刀流のブレンダン・マッケイは、6月中旬に脇腹を痛めてDL入りしたが、DL入り前の最後の出場は投手としてだったにもかかわらず、リハビリ試合は打者として出場し、打者として復帰している。

 キャッチボールを再開した大谷は今後、打者として試合に出場しながら投手としての復帰を目指しているが、これについても他の投手とは過程が違ってくる。投手としてのリハビリが順調に進んだ場合、マイナーでリハビリ登板を行うのが普通だが、マイナーの試合に出場するにはDL入りをしなければならず、そうなると打者としてメジャーの試合に出られなくなってしまう。そこで、今季中に投手として復帰する際は、DL入りをせず、試合形式の練習登板だけで調整する可能性が高いだろうと指摘する米メディアもある。

 二刀流についてもう一つ分かったのは、球団によってはルーキーや1Aなど下のレベルのマイナーでは投手に打撃練習を禁じているということだ。昨年ドラフト1巡目(全体2位)でレッズに入団した二刀流のハンター・グリーン(18)のケースがそうで、同選手は現在、投手に専念することを宣言して1Aでプレーしており「僕が今いるレベルでは、投手が打撃練習をすることが許されていない」と明かしている。上級1Aになって初めて投手も打撃練習が許され、2AになればDHのない試合で打席に立つことも可能になるという。これまでメジャーで二刀流が育ってこなかったのは、育成期間にそうした制約があるためでもあるのだろう。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」