ヤンキース田中将大
ヤンキース田中将大

ヤンキースといえばメジャーの中でも高度に進んだデータ分析部門を擁することで知られているが、選手はどのようにそれらを活用しているのか。メジャー6年目の田中将大投手(30)に、データ活用術を聞いてみた。

田中は常に試行錯誤を続け、時にはシーズン中でも大胆な修正をやってのける投手だが、ヤンキース入団当初はまだ細かいデータ分析が球界に浸透していない時期であり、試行錯誤も自身の感覚だけが頼りだった。

ところが2年目の15年にスタットキャストが導入されて一気にデータが身近になり、高度化していった。田中も今は登板間のブルペンでの投球練習に計測器を使い、データと向き合っている。

「一番大事なのは感覚ですけど、でもその感覚だけでは分からない部分、数字で細かいところを見ることができますよね、今の時代は。それで、あぁ自分の手応えと数字が一致しているなとか、自分が思っているよりも数字はいいから自信持って投げていいんだなとか(数字の生かし方は)いろいろ、とらえ方によりますよね」

まず自身の感覚で試し、データで確認するというやり方がメイン。「(データ)だけを頼りにやるってことはないですね。そのときそのときで違う。例えば相手打者の誰かの弱点はここだ、それじゃそこに永遠に投げとけばいいのかといえばそうではないし」。

それでも、データを常に見ていることでデータと感覚が結び付き、数字を感覚として把握するようになる。確か3年ほど前だったと思うが、田中が「球の回転数なんて言われても、どう変えられるのか分からない」と口にしたことがあったが、今では数字を意図的に変えることができるという。「例えばスライダーだったら曲がりを小さくしようとか、いろいろできます。曲がり幅の数字がでかければいいってものでもないだろうし、打者がどれだけ真っすぐに見えて振りにきてくれるかっていうことが大事」と、ピッチトンネルにも言及。データ時代の先端の投球術を、田中もやはり意識していた。

チームの同僚たちはどうかといえば、救援右腕オッタビーノは、自身の投球を把握するためにxwOBA(相手打者が球に対してどれだけの質のコンタクトをしているか示す数字)をチェックするなど、かなりデータを活用している。

だがメジャー19年目で今季限りで引退する大ベテラン左腕サバシアは、今年3月のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「僕はWHIPとか、分からない。分かるのは防御率と勝ち負けの数だけ。古い人間だから」と話していたし、救援右腕ベタンセスも、データを見ない主義だそうだ。高度なデータ分析設備を持つ球団でも、活用するかどうかは選手次第のようだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ヤンキース・サバシア
ヤンキース・サバシア