カブスのダルビッシュ有投手(33)が、同僚のキンブレルから教わったナックルカーブを新たな武器に加えたことが話題になったが、今季は新球の習得などでレパートリーを増やし投球レベルを一段上げた投手が目についた。

ポストシーズンに進出したチームでは、アストロズのジャスティン・バーランダー(36)とザック・グリンキー(35)の両右腕もそうだ。

グリンキーはただでさえ持ち球の豊富さではダルビッシュに並んでメジャー屈指だったが、今季初めてスプリットを投げている。米メディア「ファイブサーティエイト」によると、少なくともスタットキャストでデータを取るようになった08年以降、グリンキーがスプリットを投げるのは今季が初めて。レギュラーシーズンで左打者にのみ計6球しか使っていないが、これを含め球種が8つになり、最近4年間では自己ベストの成績を残した。

バーランダーは今年7月、殿堂入り名投手でありアストロズのエグゼクティブアドバイザーでもあるノーラン・ライアン氏にチェンジアップの投げ方について助言を受けたという。それまでもチェンジアップは投げていたが思ったように曲がらず、今年のキャンプでチェンジアップの質向上に集中的に取り組んだ。それでも良くならなかったそうだが、ライアン氏の助言をブルペンでの投球練習で試してみたところ、たちまち良くなったという。

今季ナ・リーグ最多の18勝を挙げ高いレベルの安定感を誇ったナショナルズの右腕スティーブン・ストラスバーグ(31)も今季、シンカーを使うようになった。これは厳密には新球種ではないが、6年間ほとんど使っていなかった球種。平均球速はフォーシームとほぼ変わらず、今季は自信を持ってこれを投げられているという。

日本人投手もダルビッシュだけでなく、ヤンキース田中将大投手(30)はナックルカーブ、ダイヤモンドバックス平野佳寿投手(35)はカーブを身につけ、ドジャース前田健太投手(31)も昨季ものにしたチェンジアップを今季はさらに精度を上げるなど、新球の話題が多かった。

球種を増やす傾向は、昨今のピッチトンネルの浸透の影響もありそうだ。球種の選択肢が増えれば、それだけ打者を惑わすことができる。投手が「もう1つこの球種もあると、打者に思わせることは大きい」といった発言をしているのを目にすることも多かった。

新球習得に挑戦し結局身に着かなかったケースも多いようだが、ダルビッシュはナックルカーブを教わってから一瞬にして身に着け大きな武器の1つにまで精鋭化させたし、バーランダーもライアン氏に教わってからすぐに試合で使っている。トップレベルの投手はやはり、新球の習得能力も高いようだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ナショナルズ・ストラスバーグ(2016年4月19日撮影=菅敏)
ナショナルズ・ストラスバーグ(2016年4月19日撮影=菅敏)