MLBのサイン盗みスキャンダルが大きな波紋を広げ、簡単には収束しそうにない。SNSではアストロズの選手が盗んだサイン情報を伝達する機器を体に着けていた疑惑が証拠映像付きで拡散されて炎上し続け、他球団のサイン盗みについて暴露する事例も続出している。元サイ・ヤング賞投手でホワイトソックスでプレーしていたジャック・マクダウェル氏はラジオで、同球団が80年代にカメラを使ったサイン盗みをしていたことを暴露しており、これが事実ならサイン盗み問題は非常に根深い。

マンフレッド・コミッショナーがサイン盗みの調査をしているのは今のところアストロズとレッドソックスのみ。しかもアストロズがサイン盗みをしていたのは17年途中から18年途中までで、昨季はポストシーズンも含め盗んでいなかったと結論づけている。ところが選手がサイン伝達機器を身に着けているように見える映像は19年のものだ。

コミッショナーはアストロズとレッドソックスのサイン盗みに関して処分を下すことで、幕引きを図ろうとしている。これはステロイド等の薬物スキャンダルのときと同じだ。00年代、バリー・ボンズ、ロジャー・クレメンスら球界トップクラスのスター選手がドーピングをしていたことを調査で暴き、14年に薬物使用が明らかになったアレックス・ロドリゲスを1シーズン出場停止処分とするなど、大物を見せしめ的に処分しスキャンダルを収束させた。今回も17年と18年の世界一チームという“大物”2球団を処分することは、見せしめ的な面もあると思う。

しかし、サイン盗みスキャンダルを最初に暴いた「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者は「これは球界に深くはびこる大きな問題」と何度も声を上げ、1、2球団の問題として収束させるべきではないと主張している。米国では、サイン盗みが今やドーピング問題を超えた今世紀最大のスキャンダルと指摘するメディアも多い。

コミッショナーは、サイン盗み対策として、今季新ルールの導入を検討しているという。試合中にリプレー担当者以外の球団職員や選手のビデオルーム入室禁止、MLBの警備担当者によるビデオルーム見回りなどが、実施案として挙げられているようだ。これらのルールを導入すればサイン盗みはなくなるとアピールしたいのだろうが、過去の不正に関してもっと徹底調査をしなければ、ファンもメディアも納得しない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)