前田健太投手(32)の加入で今季はツインズの試合を見る機会が増えた。そして、見れば見るほど面白い球団だと思う。

何といっても投手陣が面白い。まったく無名の2年目右腕ランディ・ドブナック(25)が今季は先発ローテに定着し、両リーグ最多に並ぶ5試合に登板した時点で防御率1点台のメジャートップ5入り。つい2年前はマイナー下部の1Aに所属し、配車サービスUberの運転手としてアルバイトをしながらプレーを続けていた投手だ。大学卒業後はドラフトにかからず、独立リーグを経てから17年8月にマイナー契約でツインズに入団している。そんな投手が突然、エリート先発投手の仲間入りをしているのだから、相当なサプライズだ。

リリーフ陣では、右腕タイラー・クリッパード(35)が驚きだ。クリッパードといえば15年以降は転々と球団を渡り歩くジャーニーマンで、ここ数年は打たれるシーンしか記憶にないような投手だ。それが今季はツインズと契約し、オープナーに複数回抜てきされて成功している。オープナーは通常、球の速い投手が起用されるのがセオリーだが、クリッパードの速球は平均145キロにも満たない。それでもオープナーを任され、好投を続けている。

前田については、ここまで4試合に先発して負けなしの3勝、防御率2・66というのは予想外というわけではない。だがドジャース時代の先発4、5番手兼リリーフから、今やエース級の働きをしていることを考えれば、なかなかのステージアップ。古巣ドジャースには予想できなかった状況だろう。

こうしていくつものサプライズを起こすツインズは、資金力ではヤンキースやドジャースなどに対抗できないため、まだどの球団もやっていないことを積極的に取り入れることでアドバンテージを狙う球団だ。データ分析などは特にそうで、昨年11月には超最先端のデータ分析システム「データブリックス」を導入したという。これは、選手のパフォーマンスを予測するシステムで、何万、何百万というシミュレーションを瞬時に行うことができ、その膨大なシミュレーションの中から最適なものをすぐに抽出できるのだという。例えば投手が投げる1球を分析するために100通りの測定法があり、その組み合わせによって想像を絶するような量のシミュレーションが行われるのだ。

とはいえデータに偏っているわけではなく、スカウト陣の目利きも重視し、うまく融合させている。前田をドジャースからトレードで獲得した際も、球団の西地区担当スカウトが大きな役割を果たしていたそうだ。前田は先日「自分のいいところをチームの方も言ってくれるので、うまく出せていると思います」と話していた。データ、スカウティング、首脳陣と選手、すべての連携がうまく取れている球団なのだと思う。