ヤンキース田中将大投手(31)が今季最後のオンライン会見で、チームメートの先発右腕ゲリット・コール(30)について語っていた。「今年、コールがヤンキースに入ってきて、彼から学ぶものは計り知れなく大きくて、自分自身への刺激にもなりました」という。さらに「そういった部分でも、今後の野球人生において、すごく大きな1年だったかなというふうには思います。彼から受けた影響も含めて。技術的なものもそうですし、考え方やアプローチの仕方もそうですし、彼の振るまいとかを見ていても、僕自身が感じるところはある」と話していた。田中がそこまで言うコールとのかかわりが一体どんなものだったのか、気になった。

あまり意識していなかったが、田中とコールは同年代だ。田中は88年生まれ、コールは90年生まれだが、コールはUCLAの大学時代に米国代表メンバーで2度来日し、日本代表だった当時早大の斎藤佑樹(日本ハム)と投げ合い、交流もあった。当時、田中はすでにプロだったが、同時代を生きてきた先発投手同士、通じるものもあるだろう。

コールはSNSで積極的に発信するタイプの選手ではなく、メディアで目立つ発言をすることも少ないため、その人となりを把握し難い選手だ。UCLAでチームメートだったレッズの先発右腕トレバー・バウアー(29)と不仲説があったり、アストロズに所属していた昨年のワールドシリーズで、チームが3勝4敗で世界一を逃した際に「これで俺はFAだ」と喜んだというエピソードが伝わっていたりするため、どちらかというととっつきにくいイメージがあった。

ところが、実際はそうではないらしい。ニューヨークの地元ラジオ局WFANで長年ヤンキース番記者を務めているスウィーニー・マーティ氏が電子版の記事に、コールの人となりに触れた記事を書いていた。それによると「コールは野球談議が好きでたまらないという選手。投球について語る時の彼は、映画監督で脚本家で俳優のクエンティン・タランティーノが映画の構想をすごい情熱で語り尽くすときと似ている」という。コールがヤンキースに移籍して間もなく、マーティ記者が何げなく「パイレーツ時代にA・J・バーネットからカーブの投げ方を教わったそうですね?」と聞くと、コールは古い握りと新しい握りの違いを実際にやって見せながら、どんな練習をして身に着けたかなどを事細かに、楽しそうに語り、話が止まらなかったそうだ。それはチーム内でも同じで、自分の持っている知識や技術をチームメートにも惜しみなく、喜々として話す。コールのあまり知られていない、意外な素顔である。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)