シアトルで、今季レギュラーシーズンの最終3連戦を見てきた。コロナ禍のため米国取材旅行は2年ぶり、シアトルは確か3年ぶりだ。その間にセーフコフィールドがTモバイルパークに名称変更され、街の風景やさまざまなシステムもずいぶん変わっていた。

重厚な雰囲気のダークグリーンで統一されていたマリナーズの本拠地球場は所々、Tモバイルのコーポレートカラーであるショッキングピンクに彩られていた。ホーム側の正面ゲートなどがそうだ。色合い的に違和感はあったが、個人的にはこれも感慨深いものがある。

筆者が米国で使用している携帯電話のキャリアはTモバイルで、もう20年は使っているのだが、契約した当初は米国内でも弱小携帯電話会社だった。そのため大手のキャリアに比べ、圏外になる場所も多かったように記憶している。それがスマホ時代になり、順調に成長した。米国内線の飛行機に乗ると、Tモバイルユーザーは1時間無料で機内WiFiサービスが利用できることが多く、非常に便利だったし、こうしたサービスを提供することでシェアを増やしていったのだと思う。今やMLBの重要スポンサーとなり、マリナーズ本拠地球場のネーミングライツまで獲得するようになった。

ショッキングピンクに彩られた場所が加わってはいたものの、球場南側の外側にあるイチロー氏の写真パネルは今もそのままだった。今やマリナーズ会長付特別補佐として活躍する同氏が、2004年10月1日にシスラーの257安打を抜いてシーズン最多安打更新を果たし、ヘルメットを取ってカーテンコールに応えたシーンの写真が、壁のパネルになっている。おそらく15年間そこに存在し続けているパネルであり、この球場を訪れると必ず目にしてきた。

客席の雰囲気も、懐かしかった。シーズン最後のエンゼルスとの3連戦は全試合が入場券完売の超満員。1階席のコンコースは試合前から大混雑していた。シアトルの球場がこれほどごった返し、熱気であふれているのを見たのは、マリナーズが最後にポストシーズンに進出したイチロー氏のルーキーイヤーの頃以来かもしれない。

1階席のコンコースを歩いていると、イチロー氏のユニホームやTシャツを着ているファンにたくさん出くわした。イチロー氏でなければ、グリフィーJr.のものを着込んでいる。この2人のユニホームやシャツ姿のファンが、とにかく圧倒的に多かった。20年ぶりのポストシーズン進出がかかるとあって、古くからのファンが大勢、球場に戻ってきたのだろう。1球または1プレーごとに歓声や絶叫が起こる超満員の球場の雰囲気は、2001年のあの熱狂を思い起こさせ、懐かしかった。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)