先発投手のFA市場が高騰している。今オフのFAランキングで投手ナンバーワンだった先発右腕ジェイコブ・デグロム(34=前メッツ)が、レンジャーズと5年総額1億8500万ドル(約259億円)で先陣を切って契約。その2日後には今季ア・リーグのサイ・ヤング賞に輝いた先発右腕ジャスティン・バーランダー(39=前アストロズ)がメッツと2年総額8666万ドル(約121億円)で契約を決めた。

ベテラン投手は契約年数がどうしても短くなるため総額は高くならないが、年平均ではバーランダーがメッツの同僚となる先発右腕マックス・シャーザー(38)と来季ほぼ同額の約4333万ドル(約60億7000万円)でトップ。全体3位は7日に残留合意したばかりのヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)の4000万ドル(約56億円)だが、4位はデグロムの3700万ドル(約51億8000万円)で全体4位、投手としては3位に入る。全体5位はヤンキースの先発右腕ゲリット・コール(32)の3600万ドル(約50億4000万円)で、メジャーの契約金年平均額トップ5人中4人は投手で占められた。

次にこの年平均額を更新するのは、エンゼルス大谷翔平投手(28)だろうというのが米球界の大方の見方だ。果たしてどんな金額になるのか。来季も投手としてエース級の活躍を続け打者としても中軸の働きをすると想定した場合、デグロムと指名打者として実績のあるJ・D・マルティネス(35=レッドソックスFA)の年平均額を足したレベルの額になる可能性もあるかもしれない。マルティネスが2018年にレッドソックスと5年契約を結んだ際は年平均2200万ドル(約30億8000万円)なので、これにデグロムの3700万ドルと合わせると5900万ドル(約82億6000万円)という大変な金額になる。だがESPNのジェフ・パッサン記者は「オオタニが来オフにFAとなれば、契約金が総額で史上初の5億ドル(約700億円)超えを記録するだろう」と予想しているので、あながち非現実的な金額ともいえない。

気になるのは契約年数だ。今のFA市場では、30歳前後の野手のトップクラス選手なら10年前後の長期契約もあるが、投手の場合はケガのリスクなどもありそこまで長期になるケースはまれだ。コールが19年オフにヤンキースと9年契約を結んでいるが、30歳前後の先発投手なら5~6年が相場になっている。投打の二刀流という他に例を見ない選手の場合はどうなるのか、注目される。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)