笑顔満載の大谷がグラウンドで輝きを放った。充実感たっぷりの表情、ホームランダービーで疲弊した様子、他球団の選手とハグで交流する姿…。ありのままに、夢の祭典を目いっぱい楽しんだ。歴史的な偉業を果たし、MLBを代表するスター軍団に仲間入り。ファンもメジャーリーガーも、現実に今、目の前でプレーする二刀流選手の一挙手一投足にとりこになった。

27歳、メジャー4年目で名実ともに最高レベルに達した。しかし、脚光を浴びるまでは浮き沈みの3年間だった。1年目、開幕から投打で活躍。並外れた才能を証明し、1度は全米に旋風を巻き起こした。6月に右肘の故障が発覚すると、周囲のほとぼりは冷めた。大谷自身も約1カ月リハビリで姿をくらまし、思いを口にすることはなかった。消えた二刀流。今が光だとすれば、闇の期間だった。

その後は、打者専念→投手復帰→打者専念のサイクルを2度繰り返した。たとえ打者で結果を残しても、それほど注目はされなかった。継続できなければ、スター選手のように脚光は浴びない。かつてメジャーに挑戦した日本人選手たちも、一時的な飛躍にとどまることは少なくなかった。27歳の大谷は肉体的にもピークを迎えている。今季、ベーブ・ルース以来の偉業や史上初の快挙を次々に達成。二刀流で順調に進めば当然、周囲はこぞって称賛する。だからこそ一過性ではなく、今後は長期的な成功が求められるだろう。

球宴前夜のホームランダービーでは「持久力」で他選手との差があった。大谷にも、まだ足りない部分はある。そして、年を重ねていくと、体の衰えとの闘いも待っている。今シーズンの完走だけでなく、来年、5年後、そして10年後も二刀流を継続する-。投打で結果を残す以上に難易度は高い。だが、固定概念を覆してきた大谷なら、可能性は十分にある。【MLB担当=斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)