エンゼルス大谷がホームランを打った瞬間、観客は立ち上がり、大いに喜び、沸いた。こん身のガッツポーズを決め、三振を奪ってピンチを脱する姿に、人々は酔いしれた。その歓喜や熱狂の中心にいた二刀流。だが、みなぎるエネルギーをもらっていたのは実は大谷自身だった。いつも、自分を奮い立たせる原動力とは-。

「一番はやっぱり球場に足を運んでくれているファンの人じゃないかなと思う。結果出る、出ないにかかわらず、来てくださるファンの人もいるし、そういうファンの人が喜んでいる姿を見たいというのが一番」

過去3年、期待に応えてきた一方で、裏切ることもあった。故障、不振、ケガの再発…。ふがいない自分にいらだつことも、不安を感じることもあった。今季でさえ「もちろん落ち込みますし、打てない、打たれたとか、そういうのも、落ち込んだりすることはある」と会見で明かした。

超人と称されることもあるが、まだ27歳。皆同じ人間で、悩み、心を打ちひしがれることだってあるだろう。だが、喜んでくれる人がいる限り、二刀流は何度でも立ち上がる。そこに、自分の理想像が加わる。「こうなりたいと思った目標に対して、諦めきれない気持ちがそうさせてくれるのかなと。日々の練習もそうですけど、目標がそういう気持ちにさせてくれる」。

感じ方は人それぞれだが、記者自身は大谷の4年間に多くのことを感じ取った。失敗と成功の一進一退で成長していくこと、地道な経験の積み重ねで前に進んでいくこと、何事もやってみること。大谷より一回りほど年齢が上で長く生きているが、教えられることが何度もあった。この日の会見でもそうだった。

「毎日、今日はここが良かったな、ここが悪かったなっていうのが、出てくるのは、すごい幸せなことだと思っているので。普通の生活では味わえない、そういう経験をさせてもらっていること自体、すごいうれしい。落ち込むことも含めて、いい1年だった」

そう思える、その先にはファンの笑顔、目指すべきゴールがあるのだろう。現地でその姿を見られる記者として、感謝を胸に、この先も共に楽しみたい。【MLB担当=斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)