米中部ミズーリ州カンザスシティーに位置するロイヤルズの本拠地カウフマンスタジアム。エンゼルス大谷翔平投手(28)が試合前の調整を終え、ダグアウト裏へ引き揚げようとすると、元ヤクルトのレックス・ハドラー氏(61)が駆け寄っていった。あいさつを交わし、少しだけ談笑した。ハドラー氏は「投手と打者、どっちが好き?」などと聞いたようで、答えは当然「両方」だったという。大谷とは2度目の顔合わせだったが、エ軍OBでもある同氏は興奮気味でうれしそうだった。

93年にヤクルトでプレーし、打率3割、14本塁打、64打点。同年に西武を下して日本一に貢献した。ヤクルト退団後は94年からエンゼルスで3年プレーし、96年にはメジャーで自己最多の16本塁打を記録。現在は、ロイヤルズ戦の中継で解説者を務める。「素晴らしい1年だった。日本食もすごくおいしかった。できれば、もっと日本でプレーしたかった」。外国人選手ながら主に「8番二塁」で活躍した。「日本でのプレー経験がなかったら、その後、メジャーでも活躍できなかった。将来、日本で監督もやりたい」。30年前の日本での暮らしは、今でも忘れられない思い出として残っているようだ。

日本と縁のあるハドラー氏は一例で、米国の各地で大谷が話題をさらっている。メジャーの顔となり、今やスーパースターで当然のことかもしれない。米国東海岸のフロリダ州マイアミでは、地元のテレビ局の1人が「現役時代のイチローと、今の大谷では、どっちが注目度が高い?」と質問を受けた。シーズン後半戦の初戦で登板した米国東部ジョージア州のアトランタでは、球場の職員が「今日、大谷は来るの? え、登板するって? ワォ」と興奮していた。

メジャー1年目は、エンゼルスへの入団をうらやんでブーイングを浴びせる敵地のファンも多かった。度重なる故障もありながら、二刀流の能力を示し、4年目の昨年に初めてシーズンを完走。もはや、どこの敵地でも歓迎されるようになった。ミズーリ川とカンザス川の合流地点で噴水が多く、「噴水の街」と呼ばれるカンザスシティー。試合前のウオーミングアップでフィールドに現れた大谷に、ささやかながら声援と拍手が送られた。【MLB担当・斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)

93年5月19日 ヤクルト対広島 サヨナラ安打を放つレックス・ハドラー
93年5月19日 ヤクルト対広島 サヨナラ安打を放つレックス・ハドラー