絵になる男は、何げない冒頭のひと言でさえも様になるものです。

 「Hello,everyone!(みんさん、こんにちわ)」。

 ヤンキースの主将として活躍したデレク・ジーター氏が3日、マイアミ・マーリンズの新しい共同オーナーの1人として、本拠地マーリンズパークで記者会見を行いました。2014年を最後に現役を引退し、43歳になったとはいえ、さわやかな表情、言語明瞭な受け答えは変わっていませんでした。報道陣とのやりとりでも常に質問者の目を見て答えようとする姿勢は、現役時代と同じでした。

 その一方で、自らが運営するサイト「The Player’s Tribune」に「デレク・ジーターからマーリンズファンへの手紙」と題して、就任の際するメッセージを掲載しました。

 その内容は、17歳当時、進学候補先のひとつだったマイアミ大学見学のため、初めて同地を訪れたことに始まり、この日を「マーリンズ野球の新時代へ初日」と位置付け、将来への展望に及んでいます。

 「私はこれまで何をするにしても、常に“言い訳なし”の精神を持ち続けてきた。私は先のことを予言したくはない。ただ、いくつかの約束をしたい。確かに試合の勝敗は重要だ。ただ、それ以上に組織全体を通して、勝利の文化を育成していきたい。それが何よりも大事だ。そのための旅が今日から始まる」(抜粋)。

 球団のオーナーがファンに対して「手紙」を書くこと自体、とても珍しいことです。しかも、大金持ちのビジネスマンでなく、野球界で育ったジーター氏の言葉とあれば、ファンにとってなおさら説得力や親近感も増すのではないでしょうか。実際、同氏は会見で「優先順位のナンバーワンはファンだ」と明言しました。さらに、オーナーに必要なこととして、選手時代の経験から「選手とのコミュニケーション」を挙げました。イチローが来季も残留すれば、今後は「オーナーと選手」としての関係になるわけです。

 ファン第一主義を掲げ、選手との風通しを良くすれば、チームの雰囲気は少しずつ変わっていくかもしれません。ヤンキース時代、世界一5回の経験を持つジーター氏は、低迷するマーリンズをどのように再生するのでしょうか。来季開幕以降だけでなく、今オフシーズンから注目を集めることになりそうです。