米球界関係者が一堂に会するウインターミーティングが「不夜城」といわれる米ネバダ州ラスベガスで開催されました。

会場がカジノを中心とした巨大なリゾート施設だったことだけでなく、球団フロント陣が、まさに昼夜を問わず、FA、トレード交渉を続けるのが、この期間です。

開催期間中、各球団のフロント陣はスイートルームにこもり、他球団や代理人らと情報を交換し、折衝を続けます。かつては、直接交渉、電話やファクスが主流でしたが、今やスマートフォン、タブレットなどで瞬時にやりとりが可能な時代。場所、時間を問わず、込み入った折衝は可能です。多忙なGMの場合、4日間すべての食事を、外出することなく、ルームサービスで済ませることも珍しくありません。

チーム再建に本腰を入れるマリナーズのジェリー・ディポトGMの場合、今オフ、ストーブリーグの「主役」として多忙を極めてきました。Wミーティング開始前に、カノ、ディアズ、パクストン、セグラ、ズニーノら主力のトレードを続々と締結。少しは落ち着いた頃かと思われました。ただ、あまりに過労が重なったせいか、3日目には肺血栓による体調不良を訴え、緊急入院するハメになってしまいました。

それでも、ディポトGMは仕事を続けていました。入院したその夜、ベッド脇からジャスティン・ホーランダーGM補佐のサポートを受けながら、インディアンス、レイズとの間で大型の三角トレードを成立させました。通常、病院内では他の患者への影響も含め、通信機器の使用は制限されるはずです。おそらく点滴を受けながらも、窓口となる同補佐に指示を伝え、難解な交渉を続けたといわれています。

それほど、メジャーのGMの仕事は過酷です。06年、当時カブスのジム・ヘンドリーGMは、心臓発作のため救急車で病院に緊急搬送されていた間に、先発左腕テッド・リリーの獲得を締結しました。

ここまで来ると、もはや「ワーカホリック(仕事中毒)」のようなイメージですし、それは、当たらずとも遠からず、でしょう。ただ彼らの場合、おそらくそれだけではないような気がします。年間数億円といわれる報酬への責任感も多々あるでしょうが、少なくとも彼らは、周囲からやらされているわけでなく、自らのやりたいことを信じて動いています。極論すれば、彼らは「負けたくない」、つまり「勝ちたい」のでしょう。

かつて、ヤンキースのキャッシュマンGMは言いました。

「ヤンキースのGMにはクリスマス(休暇)はないんだよ」

昨今、日本国内では過重労働に伴う「働き方改革」が推進されていますが、ビジネスライクといわれる米国、そしてメジャー球界にも「不夜城」のように、昼夜を問わず働き続けている人がいることも確かです。