メジャー6年目を迎えたヤンキース田中将大投手(30)が、順調なスタートを切りました。2年ぶり4回目となる開幕投手を務めた3月28日(日本時間29日)のオリオールズ戦では6回途中まで2失点(自責点1)と好投し、開幕戦初勝利。2戦目となった2日(同3日)のタイガース戦では白星こそ逃しましたが、7回途中まで1失点と力投。2試合連続無四球と、安定感抜群の投球を披露しています。

30歳で迎える今季の田中には、過去数年とは、ひと味違う落ち着き、言葉を換えれば「円熟味」のような雰囲気が漂っています。メジャーデビューした2014年、田中は開幕6連勝をはじめ、前半戦までは12勝(4敗)を挙げる快進撃を見せました。ところが、右肘が悲鳴を挙げ、選出されていたオールスターは出場辞退。後日「1年目の前半は、いいところを見せようと必死でしたし、完全にやり過ぎでした」と振り返るほど、がむしゃらに腕を振っていました。

だからこそ、過去数年はシーズンを通してコンスタントな成績を残し、さらにポストシーズンで力を出し切れるペースを、田中は考え抜いてきました。かといって、決して力をセーブするというわけではありません。昨今のメジャーでは早期継投が主流となっていることもあり、長年、体に染みついている「先発完投」の思考法から方向転換するようになりました。

「リーグ全体がそう(早期継投に)なってきていると思うので、ひと握りの投手しかそこまで投げないという感じはあると思うんです。もちろん、長いイニングを投げたいという思いはありますけど、事実、現実としてしっかり受け止めて、何より一番大事なのは、毎回、マウンドに立ち続けて、前回(開幕戦)、今回(2戦目)みたいな投球をやっていければと思っています」。

たとえ、投球数が100球未満でも、チームに勝つチャンスをもたらせば、先発としての役割は果たしたことになります。裏を返せば、完封や2桁奪三振など、ド派手な快投を演じても、次の試合で早期KOされるようでは本当の信頼感は得られません。

長丁場の公式戦は始まったばかりですが、田中は公式戦30試合以上の登板、さらにワールドシリーズ最終戦までを見つめて、マウンドへ向かっています。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)