志の高さは、言葉以上に態度や行動に表れるものなのでしょうか。

ヤンキースが2012年以来、7年ぶりにア・リーグ東地区で優勝を決めました。なにしろ7年ぶりですから、メジャー6年目の田中将大投手をはじめ、若手選手にとっては「初優勝」みたいなものなのですが、V決定後の瞬間やシャンパンファイトは、実に「大人」の祝宴でした。

確かに、シーズン中盤以降、2位以下を大きく引き離すぶっち切りの優勝でしたが、グラウンドへ飛び出すことも、跳びはねることもなく、いつもよりちょっとだけ長めに抱擁する光景に、チームとして成熟した一端がのぞいたような気がしました。

実際、シャンパンを浴びた田中は、ゴーグル姿ながらも、いつもと変わらない口調でした。

「うれしいですけど、プレーオフが大事なので」。

というのも、優勝は7年ぶりでも、プレーオフには過去、ワイルドカードで15年、17年、18年と進出。特に、昨年はディビジョンシリーズで宿敵レッドソックスに敗退。あと1歩のところで、ワールドシリーズ出場を逃しました。その後、田中は「ようやく分かりました。このためにやっている、ということを実感しました」と、しみじみと話していました。つまり、彼らにとって地区優勝はあくまでも目標のひとつであって、決して最終ゴールではありません。

この、高い志こそ、実はポストシーズンを勝ち抜くうえで大事な要素ではないでしょうか。

実際、どんなチームも開幕前は「世界一」を目標にスタートするのですが、プレーオフ進出を決めた際、口に出さずとも、ある種の満足感を得てしまうチームがあるのも事実です。162試合の長丁場を戦い抜き、疲労が蓄積した中で迎える、緊迫したプレーオフ。昨今のご時世で根性論を語るつもりは毛頭ありませんが、「高い志」と一瞬の「心のスキ」の差は、舞台が大きくなればなるほど、不思議と結果につながってしまうような気がします。

かつて、イチロー氏は「(打率)3割を打とうと思ったら、3割3分を打つつもりじゃないと打てない」という趣旨の言葉を残しました。つまり、目標以上の志を持たなければ、実現することは困難であるということでしょう。

ヤンキースだけでなく、ワールドシリーズで2年連続敗退したドジャース、さらに17年世界一のアストロズは、すでに年間100勝をクリアするなど、しっかりと頂点を見据えています。

この「3強」を中心に進みそうな今ポストシーズン。

どのチームが、10月末までより高い志を維持できるのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)