17年以来、2年ぶりの世界一を目指してワールドシリーズを戦っている真っただ中のアストロズが、グラウンド外での騒動に揺れています。

ブランドン・トウブマンGM補佐(34)が、19日のア・リーグ優勝決定シリーズを突破した直後、シャンパンファイトに参加した際、女性記者3人に不適切な発言をしたことが、後日、大問題に発展してしまったからです。

問題発言は、同GM補佐が「オズナを獲得してよかった。神に感謝したい」と何度となく連呼したことでした。意訳だけからすれば、さして問題があるようには聞こえません。ところが、この言葉の間には禁止用語が含まれていただけでなく、特定の女性に対する圧力が含まれていたとみられ、その詳細が翌日のスポーツ雑誌「スポーツ・イラストレーティッド」(電子版)で報じられたことで表面化しました。

というのも、実績豊富な快速クローザーのオズナは昨年、交際相手に暴力を振るったことで逮捕され、MLBの家庭内暴力(DV)規定に反したとして、75試合の出場停止処分を受けました。その後、オズナを獲得したアストロズに対し、批判的な意見も多く寄せられていました。今回、現場にいた女性記者3人の中に、ヒューストン在住でDV撲滅推進を意味する紫のブレスレットを着用した女性がいたこともあり、同GM補佐の発言は、その女性に対するどう喝として判断されたのです。

今回の一件が、さらに問題視されたのは、その後の対応でした。記事掲載直後、アストロズは「誤解を招くもので、無責任」と決めつけ「何もないところからでっちあげた話」とのコメントを発表。雑誌と記者側の捏造(ねつぞう)だと強硬な姿勢を見せ、事件をもみ消そうとしたのです。

これに対し、取材者側は異論を表明。記者会見などに応じようとしないアストロズに対し、全米野球記者協会(BBWAA)も異例の声明を発表する騒動に発展してしまいました。

結局、SNSなどを通して世間から猛烈な批判を浴び、形勢不利に立たされたアストロズは、その後、同GM補佐を解雇。ジェフ・ルーノーGMが雑誌社、執筆した記者に正式に謝罪する事態となりました。

もしかすると、記事掲載直後、すぐに「失言」を謝罪していれば、もう少し違う展開になっていたかもしれません。ただ今回は、どこかの国の政治家のように、事実を隠蔽(いんぺい)し、ごまかそうとしたうえに、開き直ったように相手を攻撃したことで周囲の批判が集中しました。

いずれにしても気の毒なのは、緊迫した大舞台で必死に戦っているアストロズの選手、スタッフです。完全に「水を差された」空気が漂う中、ワールドシリーズ第1戦の試合前、ヒンチ監督は「記事を見て(事件を)知った。すごくがっかりしている」と硬い表情で話していました。

本来であれば、経営陣をはじめ組織全体が、同じ気持ちで、同じ方向に向かって戦うべき、重要なシリーズです。

本拠地でまさかの連敗スタート。最終的な結果はどうなるか分かりませんが、せめてグラウンド内では、スリリングで内容の濃い試合を期待したいものです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)