あらためて「笑い」や「笑顔」の持つ力を感じた1日でした。

ブルージェイズと正式契約を交わした山口俊投手(32)が、本拠地トロントのロジャーセンターで入団会見を行いました。当初はやや緊張気味でしたが、3カ国語であいさつすると、会場内は和やかな雰囲気となりました。とりわけ地元メディアの心をくすぐったのが、カナダの公用語でもあるフランス語での「ボンジュール」。わずかひと言でしたが、気の利いたあいさつで、まさに「つかみはOK」でした。

さらに、父が元幕内力士だったこともあり、相撲の話題を振られると「大人になるにつれて、失礼なのかもしれないですけど、お尻を出すのが恥ずかしくなってしまい、野球の方が格好いいなと思って、野球の道を選びました」と返答。英訳を聞いた地元の女性記者数人を含むほぼ全員が手をたたいて大爆笑していました。隣席にいた男性記者は、「真面目な顔でジョーク。かなりおもしろい男だね」と、早くも山口のお笑いセンスに好感を覚えたようでした。

今回の山口の会見は通訳を介したものでしたが、それでもしっかりと「笑い」は取れました。日常的にジョークやウイットを好む欧米人は、ユーモアのセンスを大切にする傾向があります。どちらかと言えば日本人は生真面目な印象が強いようですが、それだけに笑いを取れれば、インパクトは強いはずです。昨季から通訳なしで取材を受けるようになったダルビッシュは、大阪出身の感性(?)を生かして、かなり頻繁にジョークを交え、地元シカゴのベテラン記者たちを笑わせています。

かつてゴルフのPGAツアーで活躍した丸山茂樹は、「丸ちゃんスマイル」で人気を集めました。昨年の全英女子オープンを制した渋野日向子は、「スマイルシンデレラ」と呼ばれるほど、とびっきりの笑顔でファンを魅了しました。

野球界でも、ブルージェイズに所属したムネリンこと川崎宗則選手は、型破りなパフォーマンスと笑顔で、地元トロントでチーム一の人気者になりました。

シビアな真剣勝負の真っただ中で、笑うことはないでしょうし、その必要もないでしょう。ただ、戦いの舞台を離れれば、あとは人間力。たとえ言葉が通じなくても、笑いや笑顔が、周囲を幸せにする共通語であることは間違いないような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)