これまでも事あるごとに感じていましたが、MLB機構と選手会というのは、何とも不思議な関係を維持しながら、ここまで米球界を発展させてきました。平たく言えば、「大人の関係」なのでしょうが…。

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新型コロナウイルスの影響で短縮シーズンとなったメジャーの公式戦も、残すところ、あと10日あまりとなりました。両リーグ各8チームが進出するプレーオフ争いは、間違いなく、最終戦までもつれ込みそうですが、15日(日本時間16日)には、ひと足先にポストシーズン(PS)の全日程が発表されました。

今季の公式戦60試合は、移動の負担や感染リスクを少しでも抑えるために、両リーグとも同地区の対決に限定して実施されてきました。そんな事情もあり、PSの日程が注目されていましたが、結果はなかなか斬新なものになりました。

今季から新設された8チームによる「ワイルドカード・シリーズ」(3試合制)は、上位4シードの本拠地で行われますが、その後の地区シリーズ以降は、中立地で開催されることになりました。

【ア・リーグ】

◆地区シリーズ=サンディエゴ(ペトコパーク)、ロサンゼルス(ドジャースタジアム)

◆リーグ優勝決定シリーズ=サンディエゴ

【ナ・リーグ】

◆地区シリーズ=アーリントン(グローブライフフィールド)、ヒューストン(ミニッツメイドパーク)

◆優勝決定シリーズ=アーリントン

【ワールドシリーズ】

アーリントン


各チームに「地の利」が生まれないように他リーグの球場で開催することが目的ですが、いずれも土地間の移動距離が短く、10月下旬でも気候は温暖で比較的に安定しています。唯一、アーリントンに本拠地を置くレンジャーズがワールドシリーズまで勝ち上がった場合が例外となりますが、今季のレンジャーズはア・リーグ最低勝率(15日終了時)に沈んでおり、PS進出は絶望的です。

これらの日程は、公式戦開催を決定した当時から原案を作成していたはずですが、発表にいたるまでの「手綱裁き」には、いつもながら感心させられます。

その一方で、3月の延期以降、機構と選手会の交渉は、年俸保証などを含め、大もめにもめました。対面交渉を避け、機構側が情報を一部メディアにリークするなど、一時は完全に泥沼状態でした。互いにSNSを使って強烈な批判を繰り返す見苦しいほどの駆け引きの応酬は、ファンやメディアから批判されました。その間、双方に信頼感は見られず、あらためて深い溝を感じさせました。

ところが、実際に開幕してしまうと、手のひらを返したかのように「一致団結」「共存共栄」を掲げて、諸問題の解決に動くのですからおもしろいものです。すべては球界とファンのためという建前もあれば、巨額の放映権料やスポンサー料が動くビジネスライクな面もあるでしょう。

今季のポストシーズンは、すべて無観客で行われますが、最大65試合のすべてが生中継で全国放送されます。

一時は、公式戦中止のウワサも飛び交った今季のメジャー。機構と選手会の不思議な関係など考えず、純粋に世界一をかけた戦いを楽しむ方が良さそうです。【四竈衛】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)