日米とも球春間近となりましたが、またしてもメジャーではゴタゴタしそうな気配が漂って来ました。

というのも、15球団がキャンプ施設を置くアリゾナ州の「カクタス・リーグ」が、フェニックスやスコッツデールなど各市の市長らとの連名で、ロブ・マンフレッド・コミッショナーに対し、春季キャンプ延期を求める要望書を出したことが、一部メディアを通して明らかになりました。依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続くアリゾナ州では、新たな感染者が1日5000人を超えているだけでなく、感染率が最も高く、住民へのリスクも高いため、各市長らが延期要請を決議したというわけです。

ところが、その文書がMLB選手会には直接届いておらず、機構側が意図的にリークしたのではないか、との臆測が出始めたこともあり、選手会側が態度を硬化させているものとみられています。今回の文書はあくまでも要望のレベルであり、かといって機構側が一方的に決定できるものではありません。最終的にはオーナー・機構側と選手会の合意が必要なため、現時点では「2月中旬キャンプイン、4月1日開幕」の予定は変わっていません。

その一方で、オーナー陣の一部はワクチン接種が進む5月中旬まで公式戦の開幕を延期する意向を持っており、今回の“リーク”がそのための布石だと推測されているわけです。もし、開幕延期となれば、選手の年俸は試合数に準じて減額されることになるため、選手会は全162試合の実施を前提にしています。キャンプ地の行政による今回の要望書を、選手会側が「圧力」と受け取る裏には、これまでに積もり積もったオーナー側への不信感があることは否定できません。

昨年の公式戦が60試合に短縮された際には、年俸配分問題などで、両者の交渉は泥沼化しました。今季の場合も、収入増となるプレーオフ枠拡大を望むオーナー側と、両リーグでのDH導入を主張する選手会の間で、駆け引きが続いています。

労使間で納得するまで徹底的に話し合うことは、大いに結構だと思います。

ただ、コロナ禍で不安が消えない中、選手や家族、さらに地域住民の健康・安全を最優先する姿勢だけは見失わないでほしいと願うばかりです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)