エンゼルスが8日、知将ジョー・マドン監督(68)を電撃解任したことが、日米両国で大きく報じられました。解任後同監督が、データを偏重し、頻繁に「現場介入」してきたフロント陣との方向性の違いを明かしたこともあり、あらためて近年のメジャーの実情が浮き彫りになりました。

過去10年来、セイバーメトリクスやスタットキャストをはじめとするデータの細分化が進み、高学歴の若いGMたちによるコンピューター戦術が、一気に広がりました。カウント別の極端な守備位置だけでなく、対戦成績などに基づいてスタメンを決めるフロントも存在すると言われます。

マドン氏の前には、フィリーズがジョー・ジラルディ監督(60)を解雇。昨季、地区優勝しながら今季は不振のホワイトソックスを率いるトニー・ラルーサ監督(77)への批判も、日増しに大きくなっています。そんな背景もあり、ベテラン監督による「オールドスクール」の限界を指摘する意見もあるようですが、果たしてそうでしょうか。

近年の低迷からの脱出を目指すメッツは昨オフ、これまでに最優秀監督賞3回の実績を持つ知将バック・ショーウォルター氏(66)を招へい。積極的に戦力補強したこともあり、現在、地区首位を快走しています。ボブ・メルビン氏(60)をアスレチックスからヘッドハンティングしたパドレスも開幕以来、着々と白星を重ね、高いレベルで首位争いを繰り広げています。

昨季のワールドシリーズは、ブライアン・スニッカー監督(66)率いるブレーブスと、ダスティ・ベーカー監督(73)が指揮を執るアストロズの組み合わせになりました。その際、両ベテラン監督による「オールドスクール対決」として注目されたのは、記憶に新しいところです。

もちろん、各球団によって経営方針や戦術は異なるでしょうが、必ずしも「データ重視」と「オールドスクール」が相反するとは限らない、ということではないでしょうか。好結果を残しているベテラン監督は、双方の利点をうまくミックスさせて試合を進めているのでしょう。

就任直後、ショーウォルター氏は、孫にも近い若い選手との年齢差について聞かれ、「私は常にスポンジだ」と、笑顔で切り返しました。

スポンジのような柔軟思考と言えば、ジョー・マドン氏の代名詞のようなものでしたが、それでもエンゼルス首脳陣とは、向かっている方向が違っていたのでしょう。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)