ロブ・マンフレッド・コミッショナーが推進する「試合時間短縮」を目的として、MLBでは来季から「ピッチ・クロック」の導入が正式に決まりました。概略としては、投手が返球された時点で時計が作動し、走者ありの場合は「20秒」、走者なしの場合は「15秒」で投球動作に入ることが義務づけられています。超過した場合、自動的に1ボールが加算され、けん制の回数も制限されるルールは、大幅な「時短」につながると見込まれています。

野球は、アメフトやバスケットボールのような時間制ではないため、2時間前後の試合もあれば、時には4時間近くになる試合も少なくありません。となると、多額の放映権料を支払ったうえで、予定枠を超えて生中継を続けるテレビ局にとっては損失を生むケースもあると言われます。特に長時間の試合が若者世代のファン離れにつながっていると言われており、今回の「ピッチ・クロック」の導入は、ファン拡大とビジネス面での合理策とも指摘されています。

その一方で、確かなデータも証明されています。米データサイトなどによると、9月上旬の時点で、今季のメジャーの1試合平均3時間4分に対し、「ピッチ・クロック」を適用したマイナーリーグには、顕著な違いが見られています。

◆3A 2時間43分

◆2A 2時間40分

◆ハイ1A 2時間34分

◆1A 2時間36分

今回の導入に対しては、選手間でも反対意見が多く聞かれていましたが、決定した以上は従うしかありません。他の投手より球種が多く、サイン交換に時間を要することの多いパドレスのダルビッシュ有は、「これまで以上に早く投げなくてはならない。僕にとってはチャレンジ」と、オフ期間などに対応する姿勢をのぞかせています。また、投手としてだけでなく、打者としても適応が必要となるエンゼルスの大谷翔平投手は、「投手だけでなく打者の間合いだったり、そこら辺も難しくなるんじゃないかなと思う」と話しています。

米国球界は、これまでも多くの議論を重ねて数多くの改革を進めてきました。もちろん「改悪」のケースもありましたが、1度、決定すると全員が同調するのも特徴です。「時短」の結果、野球人気がどうなるのか--。当面は、結果を見守るしかなさそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)