大リーグは難航した新労使協定が締結され、キャンプは当初予定から約1カ月遅れで始まりました。18日(日本時間19日)からはオープン戦もスタート。開幕の4月7日(同8日)に向けて急ピッチの調整となります。

さて、前回2月28日の当コラムでは、エンゼルスの若手有望株(プロスペクト)NO・1左腕リード・デトマーズ投手(22)を紹介しました。同じく将来的に、大谷翔平投手(27)と先発ローテーションを形成、もしくは後をつなぐかもしれない2位のプロスペクトを紹介します。

昨夏、米国でエンゼルスの試合を見た際、ペリー・ミナシアンGMと雑談の機会に恵まれました。ちょうど7月のドラフトが終わったタイミングでその話題に及ぶと、彼は大きく目を見開き、「全て投手で20人を指名した」とうれしそうに語り始めました。

その大リーグ史上初となる20人オール投手指名というドラフトで、1巡目(全体9位)指名したのがマイアミ大(オハイオ州)の右腕サム・バックマン(22)です。前年のデトマーズから2年連続の大学生投手として1巡目指名され、本人は「オオタニやマイク・トラウトに会えるのが楽しみ」と話していました。

幼い頃に両親が離婚し、母子家庭の中で兄と一緒に野球を始め、大学で頭角を現しました。3年時には12試合に先発して防御率1・81、59回3分の1で93奪三振、わずか27安打しか許しませんでした。エ軍でアマチュア担当スカウト部長を務めるマット・スワンソン氏は「彼は単なるパワーピッチャーでなく、技術も持ち合わせている」と高く評価。武器は最速102マイル(約164キロ)の速球だけでなく、スライダーも一級品。昨年はマイナー1Aで5試合計14回3分の1を投げて15奪三振。さらに、ゴロ率67%という高い数字が実力を証明しました。

今年はエ軍の有望株ランキングでデトマーズに次ぐ評価。そのデトマーズと同じく先発投手の新星候補に期待されていますが、右の先発にしては身長185センチとやや低いので、リリーフ向きという声もあります。将来的にはクローザーとして素質を開花させるのか、大谷に勝るとも劣らない剛腕デビューが楽しみです。

チームが好スタートを切るには、ブルペンがカギを握ります。ロックアウトによるキャンプ短縮で調整不足の影響は否めず、投手陣の状態を考慮し、開幕当初は先発陣の早期降板が予想されるでしょう。ミナシアンGMはロックアウト後も救援投手を獲得。ブルペンが一気に厚みを増しました。

さらに、現在マイナーキャンプに参加中の新人バックマンが昇格すれば、さらに投手力は上がります。今月初めにマイナーキャンプが始まったとき、MLB公式サイトは「早期のメジャー昇格が期待される」と報じ、地元紙も「一気のメジャー昇格の可能性あり」と紹介されました。

その理由として、最近は大学からほとんどマイナーを経験せず、メジャーで即活躍する剛腕リリーバーが増えているからです。しかも、プレーオフなど大事な試合を任されています。

大学出身ではありませんが、過去のエンゼルス新人投手で思い起こされるのが、「K・ロッド」ことフランシスコ・ロドリゲスです。2002年シーズン終盤に彗星(すいせい)のごとくデビュー。ポストシーズンも大車輪の活躍で、球団史上初の世界一に貢献しました。同じように新星バックマンも大谷の力強い援軍となり、秘密兵器を期待したいです。(大リーグ研究家・福島良一)