今シーズン、エンゼルスの選手がホームランを打った後、ダッグアウトで迎えられる儀式が話題になっています。白いカウボーイハットをかぶり、大谷翔平投手(27)も祝福されました。
この儀式、チームの盛り上げ役としてベンチ入りするクオリティーコントロールコーチのティム・バス氏が持ち込み、選手が使い始めたと伝わります。実はエンゼルスには、カウボーイハットの長い歴史があります。
1961年にア・リーグが8球団から10球団に拡張した際、いわゆる最初のエクスパンションチームとしてエンゼルスが誕生。初代オーナーは歌手、作曲家兼俳優のジーン・オートリーが務めました。彼は「歌うカウボーイ」として一世を風靡(ふうび)。CBSラジオで17年間も続いた人気番組「メロディーランチ」に登場し、93本もの映画などに出演。テレビやラジオ、さらにホテル経営や不動産業などで巨万の富を築き、球団経営に乗り出しました。
当時は喜劇俳優のボブ・ホープがインディアンス(現ガーディアンズ)に出資。往年の人気歌手ビング・クロスビーがパイレーツの株主になり、喜劇役者のダニー・ケイはマリナーズの初代オーナーを務めるなど、野球好きな芸能人がオーナーになるのは珍しいことではありませんでした。
そんな中、オートリーは36年間にわたってオーナーを務めました。82年には、当時のベンチ入りメンバー25人に次ぐ「26番目の男」として、球団史上初めて背番号「26」が永久欠番になりました。また98年には、本拠地エンゼルスタジアムに彼の銅像が建てられました。左手にカウボーイハットを持つ姿を模してつくられています。
私はアメリカの野球だけでなく音楽も大好きで、79年にテネシー州ナッシュビルにあるカントリーミュージックの殿堂を訪問。彼のレリーフや展示品などを見学して来ました。また、95年頃には、エンゼルスの本拠地ネット裏にあるオーナー席の隣で、オートリー・オーナーと並んで観戦したことも。白いカウボーイハットを見るたびに、いろいろな思い出がよみがえります。
オートリーは98年に91歳で亡くなるまで、球団筆頭オーナーとしてエンゼルスを見守りました。今季、初代オーナーの思いも詰まったシンボルが復活。大谷も1本でも多くの本塁打を打ち続けて、カウボーイハットの雄姿でベンチをにぎわせてほしいと思います。(大リーグ研究家・福島良一)




