MLBは4月7日に1週間遅れの開幕から約2カ月の日程を終え、シーズンの約3分の1を消化しました。大谷翔平投手(27)が所属するエンゼルスは今季、開幕ダッシュに成功し、1度は4年ぶりの最多「11」に乗せました。エ軍序盤戦を採点したいと思います。

5月まで好調だった要因は、マイク・トラウト外野手(30)の復活にあります。昨季はふくらはぎの負傷で36試合の出場にとどまりましたが、今季は両リーグトップ級のOPSを記録。ア・リーグMVPの有力候補にも挙がっています。昨季MVPに輝いた大谷も、投手では一時サイ・ヤング賞候補に挙がる滑り出し。打撃はややスローペースですが、5月以降は本塁打も増えています。

そして、最大の驚きがテイラー・ウォード外野手(28)です。開幕は左股関節痛で出遅れましたが、4月16日の復帰から、パワーに選球眼を兼ね備えて1番打者に定着。序盤戦快進撃の立役者となりました。

さらに最大の課題だった先発投手陣も、初の開幕投手を務めた大谷はじめ、新加入のノア・シンダーガード(29)、マイケル・ロレンゼン(30)の両右腕が期待通りの働き。昨季までメジャー下位が続いていた防御率が、一時は4位と躍進しました。

また、左右内転筋の修復手術を受けたデービッド・フレッチャー内野手(28)に代わって、前ヤンキースのアンドリュー・ベラスケス遊撃手(27)が抜群の守備力を発揮。レフトを守るブランドン・マーシュ外野手(24)の守備も光ります。

その結果、メジャー全30球団の格付けである「パワーランキング」も一時はトップ5入り。2014年以来8年ぶりプレーオフ進出の可能性が出てきました。

一方で、プレーオフに出るための課題も見え始めています。5月26~29日のブルージェイズ4連戦にスイープされ、5月31日~6月2日のヤンキース3連戦、6月3~5日のフィリーズ戦も全敗。ハイレベルな東地区の強豪相手に苦戦を強いられ、実力の差を見せつけられました。

さらに5月15日時点で最大11あった貯金も、6年ぶりの2ケタ連敗で4月14日以来の借金生活に戻るなど、現在の失速は気になるところです。5月16日以降は3勝15敗。好調だった投手陣も先発、救援とも防御率5点台と苦しみます。特にシンダーガード、ロレンゼンは奪三振率が下がり、もはやゲームを支配するような存在ではありません。トラウトも自己ワーストの26打数ノーヒットという絶不調。6月5日にはウォードまで右太もも裏の張りで負傷者リスト入りするなど、ここにきてけが人の多さも懸念材料です。

やはり、強豪相手にはさらなる戦力アップが必要です。最終的にはプレーオフでも勝つために、最大のカギは投手力になるでしょう。まずはワイルドカード戦線に残り、8月2日のトレード期限までにエース大谷に次ぐ、剛腕タイプの先発投手が必要となりそうです。ここは、ペリー・ミナシアンGMの手腕が試されます。

大リーグで11連敗しながらプレーオフに進出したチームが3つあります。1951年のジャイアンツ、1982年のブレーブス、2017年のドジャースです。まだ望みはありますが、一方で12連敗してプレーオフに進出したチームはありません。データからも、まさに今のエンゼルスは剣が峰に立たされています。大リーグでよく言われる“June Swoon(6月の急降下)”は避けたいところ。頼みの綱は、6月は打率3割1分2厘、22本塁打、OPS1・122(6月4日終了時点)といずれも月間成績がベストな大谷の存在。最良月を迎える大谷の爆発力が、チーム浮沈のカギを握りそうです。(大リーグ研究家・福島良一)

エンゼルスのウォード(2022年4月28日撮影)
エンゼルスのウォード(2022年4月28日撮影)