大リーグのトレード期限が2日(日本時間3日午前7時)に迫っています。プレーオフ進出を狙う球団が集まる「買い手市場」で、熱視線を送られているのがエンゼルス大谷翔平投手(28)です。米メディアが「球団は大谷をトレードに出す予定はない」と報じたものの、タイムアップまで何が起こるか分かりません。

なぜなら、大リーグでは絶対に移籍はないだろうと思われたスター選手が、駆け込み放出された歴史があるからです。いわゆる「ブロックバスター(blockbuster)」です。ブロックバスターとは、第2次世界大戦でイギリス軍が使用した大型爆弾、大ヒット映画などの意味。大リーグでは世間を驚かす超大型トレードのことを指し、この時期の風物詩でもあります。

過去の電撃トレードを挙げると、1977年6月15日がトレード期限だった当時、メッツが投打の柱であるトム・シーバーとデーブ・キングマンを放出。エースと4番を同時に手放すという衝撃的なニュースがありました。1989年にはツインズがエース左腕フランク・バイオーラをメッツへ放出。前年サイ・ヤング賞投手のシーズン途中移籍という、史上初の出来事がありました。

他にも1998年にマリナーズが最強左腕ランディ・ジョンソンをアストロズへ、2007年にはインディアンスが巨漢左腕C・C・サバシアをブルワーズへトレードしました。日本人では、2017年にレンジャーズのダルビッシュ有がドジャースへ移籍。昨年もナショナルズの元サイ・ヤング賞右腕マックス・シャーザーがドジャースへ移籍し、話題になりました。

また、シーズン中ではありませんでしたが、前年のMVPがトレードされた例もあります。2003年レンジャーズからヤンキースへ移籍したアレックス・ロドリゲス、2017年マーリンズからヤンキースへ移籍したジアンカルロ・スタントンらです。

思えば、1920年に元祖二刀流ベーブ・ルースもレッドソックスからヤンキースへ電撃トレードされました。このように、大リーグは主力級のトレードが日常茶飯事です。現在は大谷以外にも、ナショナルズから15年総額4億4000万ドル(約594億円)の延長契約を拒否したフアン・ソト外野手(23)が一転、放出の動きがあると報じられています。

大谷はメジャー6年目となる来季、FA権を取得します。年平均50~60億円ともいわれる巨額契約の負担や、今が脂の乗りきった選手価値を考えると、トレードの可能性はゼロとは言い切れません。30球団がビジネスライクに動く大リーグは、義理人情に流される世界ではありません。トレード成立は期限最終日に集中します。残り1分まで気が抜けない駆け引きが、水面下で繰り広げられるでしょう。【大リーグ研究家・福島良一】