エンゼルス大谷翔平投手(28)のシーズン規定投球回到達がカウントダウンです。162試合制の公式戦と同じ「162」まで、残り9イニング。先発予定は残り2回を予定し、アクシデントでもない限り、歴史的偉業が見えてきました。

先発投手にとって、規定投球回はシーズンを通して、大きなケガや故障なくローテーションを守り抜いた証しです。さらにチームのエース級であれば、昔は300イニング以上、最近でも200イニング以上を目標に投げます。2011年には両リーグ合わせて規定投球回クリアは93人、うち200イニング以上が39人もいました。つまり、1チーム平均で先発3本柱は規定投球回をクリアし、エースは200イニング以上を投げたことになります。

しかし、大リーグでも年々、規定投球回到達者は減少傾向にあります。なぜなら、各チームは先発5人、中にはエンゼルスのように6人ローテーションで臨むチームも出てきたからです。また、先発投手の球数が90~100球程度に抑えられ、長いイニングを投げるのが難しくなってきたからです。

さらに、球速アップによるケガや故障も多くなり、シーズンを通して投げられる投手が減っています。その結果、昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、両リーグで規定投球回に達したのはわずか39人でした。各チーム60試合の短縮シーズン翌年で調整不足という事情もありましたが、200イニング以上も4人にまで激減しました。

エンゼルスが所属するア・リーグは、さらに希少価値が高まります。指名打者制の影響か、規定投球回以上は15人のみで、200イニング以上クリアは皆無でした。中でも、昨年ア・リーグ東地区で優勝したレイズは、規定投球回到達者が1人もいないという珍記録まで生まれました。今季の公式戦は各チーム残り10試合程度となりましたが、米時間24日現在で162回クリアは39投手。200回以上はサンディ・アルカンタラ(マーリンズ)のみです。

そういう意味でも、今の時代で規定投球回到達には大きな価値があります。加えて、投打二刀流として打席数とのダブル規定到達なら、全く持って信じられない偉業です。実際、大リーグでは近代メジャーとされる1901年以降、同一シーズンでのダブル規定到達者はいません。

今後、大谷の影響で大リーグに二刀流が増えたとしても、体力やスタミナの負担を考えると、先発でなく救援が予想されます。実際、2003~04年にブルワーズで74試合に登板したブルックス・キーシュニック外野手がそうでしたし、最近ではレッズ時代のマイケル・ロレンゼン投手(エンゼルス)、来季から二刀流挑戦を表明するアレックス・バデューゴ外野手(レッドソックス)も投手ではリリーフです。そう考えると、来季以降もダブル規定到達は考えにくく、まさに不滅の大金字塔になるでしょう。(大リーグ研究家・福島良一)