今季のメジャーリーグでは、歴史的に見て超ハイレベルなホームラン王争いが繰り広げられています。レギュラーシーズンも残りわずかとなり、ア、ナ両リーグ各地区のペナントレースとともに個人タイトル争いも大詰め。中でも、最大の注目はドジャース大谷翔平投手が3年連続ホームラン王に輝くか? メジャー史上まれに見るハイレベルな争いを、過去の激戦を踏まえた長期的な時間軸の中で捉えていきます。
ナ・リーグは、カイル・シュワバー(フィリーズ)が自身初の50本塁打。それに対し、大谷も史上6人目となる2年連続50本塁打の偉業達成。一方、ア・リーグもカル・ローリー(マリナーズ)が従来54本塁打だったスイッチヒッター記録を更新。アーロン・ジャッジ(ヤンキース)も、2年連続50本超えのペースで量産しています。
過去の歴史を振り返ると、1920年以降「飛ぶボール」の時代がやって来て、伝説の本塁打王ベーブ・ルースはじめ、年間50本以上打つバッターが次々と出現しました。しかし、同じリーグで2人以上の選手が50本以上のハイレベルなホームラン王争いを繰り広げたシーズンは、わずか8度しかありません。
最初は1938年ア・リーグの本塁打王争い。長身スラッガーのハンク・グリーンバーグ(タイガース)が、ルースの不滅と言われた年間60本に迫る、当時右打者最多の58本塁打を記録しました。それに対し「野獣」ことジミー・フォックス(レッドソックス)も50本塁打を放ち、史上初めて同一リーグで2人の選手が50本の大台に乗せました。
続いて、47年はナ・リーグで2年連続本塁打王の実績あるジョニー・マイズ(ジャイアンツ)と、前年新人でいきなり本塁打王を獲得したラルフ・カイナー(パイレーツ)の一騎打ち。最終的に2人とも51本ずつでタイトルを分け合い、とりわけカイナーは46年から前人未到の7年連続本塁打王に輝きました。
61年はア・リーグでヤンキースの同僚ミッキー・マントルとロジャー・マリスが、本塁打王を争いました。史上最強のスイッチヒッターとして鳴らしたマントルが54本塁打を放ったのに対し、左打ちのマリスはライトが狭い本拠地ヤンキースタジアムの恩恵を受け、あのルース超えの「61」を記録。初めて「MM砲」たる言葉も生まれました。
それから長い年月を経て、96年ア・リーグで怪力マーク・マグワイア(アスレチックス)が52本塁打、前年わずか16本塁打だったブラディ・アンダーソン(オリオールズ)が、1番打者としていきなり50本塁打をマーク。前年の長期ストライキで落ち込んだ人気回復のため、再びホームラン時代がやって来ました。
98年にはナ・リーグでカージナルス移籍2年目のマグワイアとドミニカ共和国出身のサミー・ソーサ(カブス)が「史上空前の本塁打レース」を展開しました。いずれもマリスの61本を超え、最終的にマグワイアが前人未到の70本、ソーサも66本を放ちました。
その後も99年にマグワイアが65本、ソーサが63本。2001年にはバリー・ボンズ(ジャイアンツ)が年間最多記録の73本、ソーサが64本、ルイス・ゴンザレス(ダイヤモンドバックス)も57本と、3人が50本塁打以上。02年もアレックス・ロドリゲス(レンジャーズ)が57本、ジム・トーミ(インディアンス)が52本と、まるでヘビー級対決のようなタイトル争いが繰り広げられました。
しかし、90年代後半から00年代に掛けては球史最大の汚点とされる、筋肉増強剤を使ったステロイド時代。後にマグワイア、ロドリゲス、ソーサが次々と薬物使用を認め、ボンズも薬物使用疑惑の渦中にあり、もはや当時の記録は価値のないものになってしまいました。
そう考えると、今年のホームラン王争いは、あの61年以来の歴史的な超ハイレベルのレースとも言えそうです。はたして、最終的に誰が何本打ってタイトルを獲得するのか、両リーグとも最後の最後まで目が離せません。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)




