現地21日全米野球記者協会(BBWAA)の投票による今年の米国野球殿堂入りメンバーが発表された。元ヤンキースの名遊撃手デレク・ジーター氏が有資格1年目で、ロッキーズなどで通算2160安打、383本塁打、打率3割1分3厘の成績を残したラリー・ウォーカー氏が資格最終年となる10年目で選出となった。

その投票結果について多くのメディアが分析を報じている。今回なにより注目されているのが、ジーター氏への投票だ。全397票のうち、396票を獲得し得票率99・7%で殿堂入りしたものの、満票にはわずか1票足りなかったのだ。満票なら史上初の得票率100%で殿堂入りした元ヤンキースの守護神マリアノ・リベラ氏に続く2年連続の快挙だっただけに、残念がるメディアは多い。さらに誰がジーター氏に投票しなかったのかに注目が集まるのも当然だろう。

しかしリベラ氏まで満票がなかったようにどんな名選手でも満票を得るのは非常に難しいのが現実だ。地元紙ニューヨーク・ポスト紙はジャイアンツなどで活躍したウィリー・メイズ氏が資格を得た1979年に432人中23人が入れなかったこと、1982年には通算本塁打755本のハンク・アーロン氏に415人中9人が投票しなかったこと、最近ではマリナーズなどで活躍したケン・グリフィー・ジュニア氏が2016年に440票中437票だったことなどを挙げている。得票率が75パーセントを超えれば殿堂入りが決まるため、超えるのが確実な元選手に敢えて投票しない「戦略的な投票」が行われているというのである。

またスポーツ専門局ESPNは「2020年殿堂入り発表の勝者と敗者」という記事でウォーカー氏が今回選出された理由も分析している。まずウォーカー氏が資格を得た最初の数年は殿堂入り候補となる選手が多く、10人に投票できる中に入ることが少なかったものの、過去5年間に17人の元選手が殿堂入りしたため、上位に入るようになったとした。さらに若い投票者は選手の貢献度を総合的に評価する指標WARなどピーク時の活躍度合いを重視する傾向があること、そして有資格最終年の候補者を殿堂入りさせたいという意識が働くことなどを挙げている。

さらに同記事は216勝を挙げた元フィリーズのカート・シリング氏が得票率が昨年の60.9パーセントから70.0パーセントに伸ばしたことで勝者とする一方で、薬物使用疑惑で騒がれた元ジャイアンツのバリー・ボンズ氏と元ヤンキースのロジャー・クレメンス氏が得票率を伸ばせなかったことで敗者としている。

MLB公式サイトやニューヨーク・ポストなどは次の満票候補としてマリナーズやヤンキースで活躍したイチロー氏を挙げている。2025年に資格を得るが、果たしてどれぐらいの票を得ることになるだろうか。