急速に盛り上がったニューヨークの希望は一夜でしぼむことになってしまった。ヤンキースがレギュラーシーズン最終戦でプレーオフ進出を決めたものの、現地5日に行われたワイルドカードゲームでレッドソックスに2対6で敗れ、敗退したためだ。

ヤンキースはレッドソックス、ブルージェイズ、マリナーズと激しいワイルドカード争いを続け、なんとかその切符を手に入れることに成功した。その最終盤での浮き沈みがよくわかるのが、地元紙ニューヨーク・ポストの連日の1面である。ヤンキースは勝利すれば進出を決められた2日のレイズ戦を2対12で大敗してしまう。これを受けて3日の同紙の1面は「くたばれ、ヤンキース」という辛辣(しんらつ)なものになっていた。

そして勝負がかかった3日のレイズとの最終戦では投手戦の末、9回の裏アーロン・ジャッジ右翼手の単打により、1対0のサヨナラ勝ちをおさめ、ワイルドカード2位での進出を決めたのだ。翌4日の1面はジャッジがチームメートから祝福の水をかけられる写真と共に、「ワイルド!」というコピーで激しい勝利でワイルドカードをつかんだことを表現していた。

さらに5日の1面はというとVサインをした女性が「ボストン最低」と描かれたTシャツを着ているというものだった。これは宿命のライバルともいえるレッドソックスと1試合制のワイルドカードゲームで激突することの大きさを表現したもので、同時にVサインは自信の表れといえる。実際、アメリカのスポーツメディアではこの対決を今シーズン最大のゲームと表現したものも数多く見られた。

と同時に、ヤンキースが有利だろうと見方も多かったのである。先発が2019年に9年3億2400万ドルの大型契約で加入し、今シーズンも16勝を挙げたゲリット・コール投手だったからだ。レッドソックスの先発、ネーサン・イオバルディ投手も11勝を挙げているが、コールの方が格上と地元メディアやファンが考えるのもある意味仕方ないかもしれない。

だがそんな期待は裏切られることとなってしまった。レッドソックスは1回裏に4番ザンダー・ボガーツ遊撃手が先制の2ラン本塁打を放ち先制。さらに3回に先頭の1番カイル・シュワバー指名打者がソロ本塁打で追加点を挙げた。コールはさらに単打、四球を献上し、3失点で降板する事態となってしまったのである。一方イオバルディは6回途中まで1失点の好投を見せ、6対2で勝利する要因となった。

この失意の敗退に対し、6日付のニューヨーク・ポストは1面ではなく、裏1面でうなだれるコールの写真に「ゲリット・ブリーピング・コール」という見出しを掲載した。ブリーピングとはいわゆる「ピー音」のことだ。それだけコールへの失望感が大きかったのである。

これだけハラハラしたシーズンを見られたのだから、満足すればといいたいところだが、そうはいかないのがヤンキース・ファンとメディアなのだろう。