今年4月、たまたまパドレスのプレラーGMと同室で試合観戦するチャンスに恵まれた。名門コーネル大学を卒業した秀才。カブスのエプスタイン球団本部長(エール大卒)が、02年オフにレッドソックスGMに就任。そのアイビーリーグGM(学歴はあるがプロ選手歴のないGM)”の流れをくむ1人だ。

 普段はほとんど感情の起伏を見せず、インタビューにも淡々と答える。試合を見る時も、スカウト時代に鍛えた鋭い観察眼を光らせ、冷静沈着な様子を貫くのかと思っていたが、実際はまったく正反対だった。

 とにかくよくしゃべる。一緒に観戦していた同GMの師匠であり、スカウト歴50年を誇るウェルキ・スカウト統括責任に、気が付いたことや頭に浮かんだことを話し続ける。ピンチになると、立ち上がってスコアブックが手に届く範囲を行ったり来たりとせわしない。好プレーにはガッツポーズ、お粗末なプレーにはうなり声。ウェルキ氏は、そんなGMをなだめるかのように、絶妙なタイミングで好物のクラッカージャックを勧める。その様子がなんともほほ笑ましかった。

 ウェルキ氏は「AJ(プレラーGM)は、こと野球になると暴れ馬のようにアグレッシブルになることがあるんだよ」と笑う。2人が出会ったのは03年、ともにドジャースで働いていた時だ。24時間営業のレストランで明け方まで野球について、スカウトについてなど、質問攻めにあったという。同氏は「自分にとっては息子みたいなもの。だが、ひいき目ではなく、過去5年、AJ以上に世界各地でスカウト活動に時間を費やした人物はいないはず。野球が大好きなんだ」と誇らしげに話した。

 不本意に終わった今季の反省をどのように生かすのか。来季もパドレスの師弟コンビから目が離せなそうだ。【佐藤直子】