【アーリントン(米テキサス州)7月31日(日本時間8月1日)=四竈衛】ダル、ドジャースへ電撃トレード-。レンジャーズのダルビッシュ有投手(30)が、ド軍へ移籍した。トレード最終期限の同日午後4時(東部時間)寸前に、両球団の交渉が成立。レ軍へはマイナーの3選手が移籍する。現在、地区首位を独走するド軍では、ダルビッシュと前田健太投手(29)がタッグを組んで、1988年以来、29年ぶりの世界一を目指すことになる。

 まさに電撃移籍だった。米中部時間午後3時(東部時間午後4時、日本時間1日午前5時)のトレード最終期限を過ぎた時点で、一報は流れておらず、レ軍関係者の間には残留の空気が流れ始めていた。実際、バニスター監督が、グラウンドで息子の守備練習を見守るなど、のんびりムードさえ漂っていた。ところが約10分後、全米中の記者が次々とツイッターで「ダルビッシュ移籍」を伝え始めた。その数分後、移籍先がドジャースと判明。レ軍ブレーク広報部長が大慌てで、記者会見の準備を開始した。

 会見に臨んだダルビッシュは、動揺するそぶりも見せず、淡々と移籍を受け止めていた。「3時前くらいで、もう決まりそうという話が(代理人から)あったので心の準備はしていました。チームメート、ファンの方々にお世話になったので、本当に感謝しています」。地元ファンへメッセージを残した際、一瞬、伏し目がちになったのが、わずかに見せた感情だった。

 29年ぶりの世界一を目指すド軍の執念に、最後はレ軍が折れた形でトレードは成立した。過去数日間、交渉が繰り返される一方で、ド軍はレ軍が狙う若手有望ランクのトップ3は放出しない方針を固めていた。そのため、一部では「ダル残留」の見方が根強くなり始めていた。

 それでも、ド軍はランク4位のカルフーンらを新たな交換要員として粘り強く折衝を重ねた。交渉の達人同士のつばぜり合いが、リミットギリギリまで展開された。レ軍ダニエルズGMは「複数球団と交渉したが、ドジャースが最もアグレッシブだった。決まったのは、最後の10分前。彼は球界でベストの投手。6年間の努力に感謝したい」と交渉の経緯を明かし、最後はダルビッシュへエールを送った。

 愛着の深いレ軍を離れるとはいえ、ダルビッシュにすれば、強豪に必要とされることを意気に感じる部分もある。左腕カーショーが故障離脱中のド軍では、先発ローテの柱として前田と一緒にワールドシリーズ制覇を目指すことになる。「(今季)一番勝っているチームから欲しいと言われて、すごく光栄なことだと思います」。今オフ、FA(フリーエージェント)市場で「特Aランク」となるダルビッシュにとって、世界一の勲章が最高の付加価値となるに違いない。