マーリンズのイチロー外野手(43)が「世界の王」を超えた。本拠地でのナショナルズ戦の5回に代打で登場。中前打を放ち、日米通算で王貞治(巨人)のプロ野球記録5862塁打を上回る5863塁打(日本1889、米国3974)を記録した。

 5回裏1死。イチローはこの試合まで通算打率3割5分7厘と打ち込んでいた左腕ゴンザレスの投球を5球続けて見逃した。「頭を使うから面白い。ただ投げて、ただ振って、では全然ない」。駆け引きを楽しみながら、カウント3-2から一振りで決めた。

 89・4マイル(約144キロ)直球を捉えると、打球は中前へ。メジャー歴代3位タイとなる今季25本目の代打安打。最多記録にあと3本に迫る一打で、王の塁打数も上回った。

 イチローは、参加した06年WBCの監督だった王について「王監督の記録のみが(自分にとって)特別と言えるかもしれない」という。常に冷静だが野球への情熱は人一倍。日々の生活から自らを律し、準備には最善を尽くす。王の記録と自分の数字が交錯するたび、その姿勢の大切さをあらためて思うという。

 「抽象的な表現ですが、おかしなことはできないと思いますね。王監督の記録とか王監督と何かを比べてもらえることで、そういう感情が僕の中で生まれる」。ただ、イチローの活躍にもかかわらずチームは4連敗。ワイルドカード進出圏内まで7ゲーム差だ。イチローにとって厳しい戦いは続く。