夢が膨らむ1発だ。エンゼルス大谷翔平投手(23)がツインズ戦に「5番指名打者(DH)」で出場し、7回の第4打席で5号ソロを放った。右腕ヒルデンバーガーのシンカーを捉え、貴重な追加点をたたき出した。推定飛距離は126メートル。パワーあふれる打撃に、現地では日本人選手として初めてとなるMLBオールスターでのホームランダービー選出もささやかれ始めた。

 大谷は打った直後に少し歩き、ゆっくりと走り始めた。2点リードの7回2死、初めて対戦するヒルデンバーガーの初球だった。「しっかり振り切れていたので、いい打球だった」。シンカーを完璧に捉え、本塁打となる手応えがあった。打球は高く舞い上がり、エンゼルスタジアムの名物、パイルロックへと吸い込まれた。「イメージ通り、球もたまたま甘かったですけど、しっかり打てた。勝ちにつながって良かったと思います」。納得の打撃だった。

 勝利に貢献する貴重なアーチと同時に、夢を膨らませる本塁打でもあった。試合前、MLB公式サイトの記者から日本メディアに、ある質問が飛んだ。「大谷は日本でホームランダービーに出たことがある? 優勝した?」。2日前、ロッキーズ戦前の打撃練習で、右翼3階席に150メートル弾を連発した。周囲の度肝を抜いたその後、球宴での「ホームランダービー出場」がささやかれ始めた。興味津々に現地メディアが話題にする中、打席でそのパワーを見せつけた。

 もっとも大谷は、二塁打を打つことを打撃スタイルの基礎とする。本塁打はその延長で出るという考え。「ホームランを量産するタイプではないと思っているので、ツーベースを基準にいければいい」。その言葉通り、第2打席では右中間へ適時二塁打を放った。「今日みたいなバッティングがベースになってくれば、ホームランは出るのかなと思います」。二塁打の後に本塁打を打つ。自らの理想を実践した。

 今季7度目のマルチ安打で、打率も3割5分4厘まで上昇。大谷は2本の長打を「どちらも良いタイミングで打てた」と充実した表情で振り返った。二刀流として申し分のない好スタートを切り、球宴出場も現実味を帯びてきた。夢は膨らむ一方だ。【斎藤庸裕】