【ニューヨーク28日(日本時間29日)=四竈衛】メジャーの公式戦が米国でも開幕-。2年ぶり4回目の開幕投手を務めたヤンキース田中将大投手(30)が、開幕戦初勝利を挙げた。オリオールズ戦に先発し、6回途中まで6安打2失点(自責1)と好投。世界一へ向け、メジャー6年目の好スタートを切った。

地元ファン総立ちのねぎらいの拍手に対し、田中は帽子のつばに手を当て、控えめに「返礼」した。6回表2死から適時二塁打を許し、83球で交代。少し不本意さは残っても、試合を支配し、責任を果たした事実は素直に受け入れられた。「しっかりゲームをつくることもできましたし、チームも勝ちましたし、いい1日だったと言えるんじゃないでしょうかね」。

同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかなかった。過去3回の開幕戦は0勝2敗、防御率9・49。期待に応えられず、白星とは無縁だった。今回も重圧は感じた。「だれだって緊張します。僕だけじゃなく、みんな緊張してます」。序盤の3回まで無失点ながら、実際は細かい制球に苦しんだ。だが、1回裏、自軍打線が3点を先制。「味方の援護が大きかった。そこに尽きると思います」。毎回先頭打者を仕留め、傷を広げることなく、リードを保って救援陣へバトンを渡した。

30歳で迎えるメジャー6年目。25歳右腕セベリーノの離脱で開幕投手を任されたものの、柱としての自覚はより強まっていた。「こうして開幕のマウンドに上がれたのは誇りには思いたいです」。29日は、6月に第2子出産予定のまい夫人の誕生日。スタンドで観戦した家族の声援に初勝利で応えた試合後は、ポツリと「はい。良かったです」と照れ笑いを浮かべた。

米国開幕を前に、日本球界をけん引したイチローが引退。今後は、田中ら後輩がリードする立場となる。田中自身は「僕ごときはそんな人間じゃないんで…」と首を振るものの、周囲はそう見ていない。開幕初白星はその第1歩。「ひとつ成長した姿を見せられたと思います。これまで勝ってなかったですから。それを自分の糧としてやれてきたからこそだと思います」。ヤ軍として09年以来10年ぶり、田中にとっては初の世界一へ。エース右腕が、まずは順調に滑り出した。