【ロンドン29日(日本時間30日)=四竈衛】欧州初のメジャー公式戦は、空前の大乱戦となった。ヤンキースの先発田中将大投手(30)は、レッドソックス戦に先発。初回に6点の援護を受けながらも制球に苦しみ、4安打6失点。同点に追い付かれ、自己最短の2/3回でKOされた。試合は今季最多となる両軍30得点の大混戦の末、ヤ軍が逃げ切り、欧州初勝利を挙げた。

歴史的一戦での先発を意気に感じたはずの田中が、悔しさだけを残して降板した。初回、ヤ軍が打者10人の猛攻で6点を先制。30分にも及ぶ攻撃後、ヤ軍投手として第1球を投じた。だが、持ち前の精密な制球が定まらない。2ストライクに追い込んでも甘い球を打たれ、安定感抜群のスライダーがすっぽ抜け、地面をたたいた。「いろんな方をガッカリさせるような投球になってしまったと思いますが、一番ガッカリしてるのは自分自身です」。連打、連続四球、犠飛、最後は同点3ラン。わずか37球で交代を告げられた。

5万9659人が詰め掛けた欧州初戦。レ軍主催試合でも両軍がホームのユニホーム姿でプレーした。「全然違う雰囲気になるんだと思ったり、新鮮だなと思いました」。初観戦の欧州ファンも多く、メジャー全体の看板を背負ったマウンド。ヤ軍の「YMCA」、レ軍の「スイート・キャロライン」など両軍本拠地だけでなく、他球団の名物イベントも披露された特別な試合で、野球の魅力を伝えるつもりだった。

もっとも、痛打されたのは田中だけではない。レ軍先発ポーセロは1/3回で6失点。33球で降板した。制球力に定評のある2人が、ともにストライクを取るのがやっとだった。後続の両軍救援陣も制球に苦しみ、両軍合計30得点の大乱戦。それでも打球音が響くたびに歓声が響き、6アーチに拍手が沸いた。「打撃だけが野球の醍醐味(だいごみ)じゃないところを見せていけたらいいかと思いますけど、僕がそこをさらけ出してしまいました」。

田中にとっては苦い登板となったが、米球界として欧州での第1歩は刻んだ。「こういう機会はこれからも続いていけばいいかなと思います」。視界に残る満員のスタンドだけが、ロンドンでの印象的な思い出となった。